期待が失望に、歓声が嘆声に変わるのを骨身に感じているはずだ。引き際という言葉も頭をよぎったかもしれない
今場所、一人横綱として重責を果たせなかったことに、人一倍のふがいなさを感じているのは、当の稀勢の里だろう。鬼門の初日にはたき込まれ、ばったり。まさかの連敗を喫した2日目は取組後に直行した風呂場から、叫び声が聞こえてきたという
心技体、どれを欠いても一人横綱の土俵は務まらないけれど、どれも十分ではなかったようだ。3日目きょうも、4日目またきょうも土。好角家らの目には、痛々しさと見苦しさが混在するように映っていただろう。いよいよ引き際か
日を追うごとに、そんな見方が勝っていたが、横綱は休場を選んだ。「このままでは終われない。チャンスをください」と師匠に話したという。迷った時は困難な道を選べに倣ったのか。しかし、行く道は、いばらである
重責を果たせなかったという申し訳なさを胸に、体がついていけなかったもどかしさをどう克服していくのか。横綱ゆえの、稀勢の里らしい土俵を見せなくてはならない
返す返すも、引き際は難しい。終わりを告げてくれる任期や年齢制限などがないばかりか、未練がましいとも言われかねないだけに、なお難しい。失望は期待の裏返し。来場所、自らの可能性に懸ける。