未来志向の関係構築を確認した「日韓共同宣言」発表から20年になる今年、両国関係を安定軌道に乗せる絶好の機会だったが、ここにきて対立が深刻さを増している。

 慰安婦問題や自衛艦の旭日旗掲揚問題でぎくしゃくしだし、日本企業に賠償を命じた韓国人元徴用工訴訟判決で拍車が掛かった。

 両政府が調整してきた、文在寅(ムンジェイン)大統領の年内来日は困難な見通しとなり、国際会議に合わせての首脳会談も危ぶまれている。

 この状況が長引けば、経済や貿易、民間の文化交流はもとより、北朝鮮問題にも影響を及ぼしかねない。両政府は、早急に事態の打開に努めてもらいたい。

 両国のあつれきが強まったのは秋に入ってからだ。

 文氏が9月、慰安婦問題の日韓合意(2015年)に基づく「和解・癒やし財団」の解散を示唆。10月の国際観艦式では自衛艦に旭日旗を掲揚しないよう要請があり、日本側が式典への艦艇派遣を見送る事態に発展した。その直後には、韓国の国会議員団が島根県・竹島に上陸した。

 韓国側が一方的に仕掛け、関係を冷え込ませたのは明らかだ。

 対立が決定的となった10月30日の元徴用工を巡る韓国最高裁の判決では、1965年の日韓請求権協定に反するとして、安倍晋三首相や河野太郎外相が「あり得ない判断」「国際秩序に対する挑戦」などと激しく非難した。

 これに対し、韓国側も「日本政府指導者たちが過激な発言を続けている」と不快感を表明し、溝が広がった。

 この問題では、韓国政府は協定の趣旨を踏まえ、解決策を見いだす責任がある。ただ、非難の応酬はさらに事態をこじらせることになる。ともに冷静な対応を求めたい。

 関係悪化で最も影響が懸念されるのは、北朝鮮の非核化と拉致問題だ。

 米朝による非核化交渉は、膠着(こうちゃく)状態が続いている。完全な非核化の実現まで経済制裁を続けることが重要であり、日米韓の緊密な連携が欠かせない。

 ところが、韓国は中ロと同じく制裁緩和の検討を主張し始めている。首脳同士が早急に擦り合わせる必要がある。

 拉致問題の行方も不透明さを増しかねない。安倍氏は、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との首脳会談に意欲を見せており、文氏には橋渡し役となることを期待しているからだ。

 日本政府内には当面、日韓の2国間会談を見送るべきだとの声が強まっているという。5月の日韓首脳会談で融和ムードが広がったが、半年もたたないうちに暗雲が漂いだしたのは残念だ。

 しかし、こうした状況だからこそ対話が大事なのではないか。両国はこれまで何度も険悪な関係に陥ったが、互いに知恵を出し合い、改善に努めてきた。その経験を生かし、対立が先鋭化しないよう対処すべきである。