多くの命を預かっているという自覚に乏しい。組織のチェック体制も形骸化していたというほかない。

 日航と全日空でパイロットによる飲酒絡みの不祥事が発覚し、両社は国土交通省に再発防止策を提出した。

 航空機事故はひとたび起きれば大惨事になりかねない。両社は危機感を持ち、組織を挙げて再発防止を図らなければならない。

 不祥事はともに先月起きた。日航は、イギリスの空港で乗務直前のアルコール濃度が基準値を大幅に超えていたとして、副操縦士が現地の警察に逮捕された。全日空は、機長が前日の飲酒で体調を崩し、これが原因で5便が遅延した。

 日航の副操縦士は、警察の検知前に行われた自社検査を不正にすり抜けていた。その場にいた同僚機長も気付かなかったという。

 いとも簡単にごまかせる程度の検査だったのか。ずさんと非難されても仕方ない。

 日航は再発防止策の提出に合わせ、昨年8月以降に基準値を超えた事案が19件あったことも明らかにした。このうち12件は便の出発が遅れた。全日空も基準抵触が過去6年間で8件あったと公表した。

 こうも頻発していたとは驚きである。

 日航は、パイロットの飲酒が原因で事故を起こした過去がある。

 1977年、米国アンカレジ空港で貨物機が離陸直後に墜落し、乗員・添乗員の5人全員が死亡した。事故の教訓は一体どこにいったのか。

 日航と全日空は再発防止策として、乗務開始前の飲酒禁止を12時間前から24時間前に延ばした。新型検査器を導入し、運航乗務員同士のアルコール検査に空港スタッフが立ち会うようにもするなど、二重三重にチェックするとしている。

 日本では航空法などの法令でアルコールの影響がある状態での乗務を禁じているが、アルコール検査は義務付けられておらず、濃度基準の定めもない。

 日航も全日空も独自規制を設けている。日航は道路交通法より厳しいアルコール基準だが、違反を防ぐことはできなかった。

 国交省はこれまで、航空業界を信用して法規制を進めてこなかったが、不祥事を受けて年内に新たなルール案をまとめる方針を決めた。さすがに厳格化に踏み込まざるを得ないだろう。

 規制強化と同時に、社員の意識改革も求められる。さまざまな社員教育に取り組み、緩んだ安全意識を正すことが必要だ。

 パイロットは精神的にきつい業務である上、合理化によってストレスが増しているとも指摘されている。乗務前の大量飲酒を招いている可能性もあるため、メンタルケアも重要となろう。

 日航と全日空は飲酒不祥事を一掃するために、あらゆる手だてを講じるべきだ。