日産自動車のカルロス・ゴーン代表取締役会長が、金融商品取引法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。

 2011年3月期~15年3月期の5年間に計約99億9800万円の金銭報酬を受け取ったにもかかわらず、計約49億8700万円と過少に記載した有価証券報告書を関東財務局に提出したという疑いが持たれている。

 金商法は、業績や役員ごとの報酬額などを正確に記載することを義務付けているが、これをないがしろにしてきたようだ。

 ゴーン容疑者はフランス自動車大手ルノー、三菱自動車の会長も務めている。それだけに、国内外に広がる波紋はあまりに大きい。

 事実なら、市場も会社の従業員らも欺いてきたことになる。断じて許されない。早急な実態解明が必要だ。

 見過ごせないのは、他にも会社の資金を不正に流用したと日産側が指摘していることである。投資資金や経費の私的流用が確認されたとしており、業務上横領や特別背任などの容疑で立件される可能性もある。

 さらに、ゴーン容疑者は、日産側がオランダなど海外4カ国で購入した複数の住宅を無償で利用していたとみられることも分かった。

 ゴーン容疑者は、経営危機に陥っていた日産にルノーから派遣され、1999年に最高執行責任者となり、2000年に社長に就いた。

 短期間でV字回復を成し遂げるなどして「カリスマ経営者」の地位を築いたものの、一方で大胆なリストラを断行し、「コストカッター」の異名もとった。

 三菱自動車との提携でも主導的な役割を果たし、大きな権限を握り続けたが、西川広人社長はおとといの記者会見で「最近は権力の座に長くいたことの弊害が見えていた」と述べていた。ゴーン容疑者の手腕に依存してきた面も多々あっただろう。

 今回の事件は、内部通報に端を発し、監査役の問題提起を経て、数カ月の社内調査をしたとしている。長年にわたり、不正が放置されてきたのはなぜか。

 不正を見抜けなかった原因をしっかりと突き止め、体制を変えていくことが重要だ。

 社内には、長く続く集中的な権力構造とともに、ルノーとの関係、異例の高額報酬などへの不満もあったのではないか。「クーデター」では、との見方もある。

 日産は17年秋以降、新車の無資格検査問題や燃費測定の不正などの不祥事が相次いで発覚している。

 信頼回復を図っている途上で、またブランドイメージが低下しかねない。

 日産は、ゴーン容疑者の会長職解任を決める取締役会をあす開く。第三者委員会も近く設置するとしている。

 不正は他にないか。動機や経緯なども含めて、徹底的に洗い出していかなければならない。