子どもたちに大人気のカブトムシ。朽ち木やシイタケのホダ木、腐葉土などが蓄積している場所で土を掘り返してみると、幼虫が見つかる。育てるのは、不安かもしれないが、環境を整えさえすれば、すくすく育つ。家族で協力してうまく越冬させ、成虫まで育ててみてはどうだろう。飼育のこつを専門家に教えてもらった。

カブトムシの成虫

 教えてくれたのは、県立佐那河内いきものふれあいの里ネイチャーセンター長の大原賢二さん。日本のカブトムシはもちろん、世界最大のヘラクレスオオカブトムシなどを育てた経験を基に、「日本のカブトムシの幼虫の飼育は外国産に比べて難しくはない」と断言する。

 大切なのが飼育ケースの大きさ。幼虫は12月頃まで腐葉土をよく食べるため、たくさんいると餌がすぐ不足する。一般的な水槽(縦23センチ、横38センチ、高さ25センチ)なら4~5匹が目安。「例えば6匹以上いれば、水槽を二つ準備することを勧めます」

 餌となる腐葉土は水槽の深さの8割まで入れ、幼虫が食べて2、3割減れば、新たに増やす必要がある。

今秋にふ化したカブトムシの幼虫。11月上旬には大人の指の太さぐらいまで成長している

 ただ、腐葉土なら何でもいいというわけでない。「広葉樹の腐葉土や朽ち木に限り、針葉樹の腐葉土は絶対に駄目。最近はペットショップでも購入できる。菌床シイタケの栽培で使ったブロックもいい」とアドバイス。

 さらに注意点として朽ち木の場合はよく点検し、幼虫の天敵である細長いコメツキムシの幼虫などを取り除くよう呼び掛ける。水槽内に散らばる直径5~6ミリの黒い粒は幼虫のふんで、目立つようになってきたら取り除き、水槽内を清潔にしておこう。

 次に、気を配らなければならないのが温度と湿度の管理。水槽は日光が当たらない場所に置くのがふさわしい。「日が当たるとケースの中の温度が激しく上下して幼虫にダメージを与える」ためで、雨水が流れ込むのも厳禁だ。

 土の中は意外に温かく、水槽の置き場所は外気の温度に近い環境で構わない。玄関や倉庫で十分という。その上で、1、2週間に一度、腐葉土の表面全体を霧吹きで湿らせ、適度な湿度を保つことが大切だ。

 年末が近づくと、幼虫の体は脂肪を蓄えて半透明色から、わずかに黄色みを帯びる。冬眠はしないが、活動は鈍くなる。温度が上がる春先からは、腐葉土をたっぷり与えよう。

 「早ければ5、6月に入ると、さなぎから成虫になる。さなぎになる時期はケースをできるだけ動かさないように。手塩に掛けて育てたカブトムシが地上に現れた時、大きな感動がわき上がってくると同時に命の大切さ、生命の尊さなどに気付くだろう」と話している。