外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案が、衆院法務委員会で実質審議入りした。

 これまで、高度な専門人材に限っていた受け入れ政策を転換し、単純労働分野での就労を可能にする。

 多数の外国人労働者が流入すれば、日本社会の在り方を変える可能性がある。政府は十分な説明責任を果たさなければならない。

 ところが、山下貴司法相の答弁は具体論に乏しく、説得力に欠けている。制度設計や対象業種、受け入れ人数など疑問は尽きない。

 政府は来年4月1日の施行を目指しており、与党は今国会で成立させる方針だ。将来に禍根を残さないためにも拙速は慎むべきである。

 改正案では、一定技能が必要な業務に就く特定技能1号と、熟練技能が必要な業務に就く同2号の在留資格を新設する。1号は在留期限が通算5年で家族帯同を認めない。 しかし、2号は期限の更新ができ、配偶者と子どもの帯同も可能だ。条件を満たせば永住にも道が開ける。

 政府は農業など14業種から受け入れを検討し、改正案の成立後に、さらに詳細な受け入れ分野を決める方針だ。

 これでは、国民が不安に思うのは当然だ。重要な改正である以上、制度の詳細を煮詰めた上で、国会で中身を精査するのが本来の在り方ではないか。改正案を「突貫工事」と揶揄(やゆ)されるようでは困る。

 もちろん、深刻な人手不足をいつまでも放置できない。

 労働力不足はますます深刻になっている。徳島県内でも、黒字なのに、人手不足から閉鎖に追い込まれた事業所もあるようだ。

 経済界をはじめ、県内の事業所からも、来年4月からの改正案施行を支持する声が上がるのは、事態が切迫しているからだろう。

 一方で、慎重論も根強い。意思疎通を図って仕事の質を保てるのか、治安が悪化しないか-など憂慮すべき点は幾つもある。雇用者側に、賃金支払いや労働条件をしっかり守らせるのも課題である。

 新資格に移行できる外国人技能実習生に失踪が相次いでいるのは、現行制度の不備を示すものだ。長時間労働や賃金不払いなど雇用主の法令違反が原因で、看過できない。

 政府は、新設する出入国在留管理庁で、管理を抜本的に強化する方針だが、本当に大丈夫なのだろうか。

 法務省は当初、実習生の失踪動機の約87%が「より高い賃金を求めて」だったとの調査結果を示した。だが、野党の追及を受けて、「低賃金」の動機が約67%を占めていたと訂正した。

 山下法相は衆院法務委で陳謝したが、国民の信頼は揺らいだといえる。

 受け入れを拡大するのは、国民、外国人労働者双方の不安要因を解消する手だてを講じてからでも遅くはない。

 与党が数の力で押し切ることは許されない。