360度撮影可能なカメラで記録する橋本さん=徳島県阿波市阿波町の旧阿波町役場

 建築家増田友也(1914~81年)が手掛けた県内の建築物を次世代に残そうと、徳島市八万町の会社員橋本敏和さん(36)が、デジタル写真で保存している。鳴門市役所本庁舎の解体が決まるなど、老朽化した増田建築が取り壊される可能性が高まっているためだ。専用カメラで撮影し、バーチャルリアリティー(仮想現実、VR)で立体的に再現できるようにする。
 
 橋本さんは、360度撮影できるデジタルカメラで写した写真を専用ソフトで合成してVRを製作する。建物内の床や天井、壁面の構造をさまざまな角度から見られる。

 4月に活動を始め、鳴門市役所や市文化会館など7施設で撮影を終えた。9月に一般社団法人「神山アーカイブレコード」を神山町に設立し、記録・保存を本格化させた。

 橋本さんは東京都目黒区出身。2014年2月に映像製作などを手掛ける「プラットイーズ」(東京)に就職し、16年8月から神山町のサテライトオフィス「えんがわオフィス」に勤めている。

 建築雑誌などで県内にモダニズム建築の権威とされる京都大元名誉教授の増田の作品があると知った。老朽化した建物を記録する必要性を感じたという。

 今月19日には、増田建築の一つである旧阿波町役場を訪れ、町長室や議場、中庭など6カ所で撮った。手動でカメラを上下左右に回転させ、天井や窓のデザイン、柱の大きさや配置などを収めた。

 橋本さんは「貴重な建築物を多くの人に知ってほしい。将来は撮影したVRをサイトで公開したい」と意気込んでいる。