とても堂々として見えた。ライフル射撃の初戦、10メートルエアライフル立射に臨んだ小松島市出身の山下敏和選手(39)の印象だ。
決勝進出はならなかったが、直前練習から試合後のインタビューまで終始落ち着き「プレッシャーで手足が震えた」という前回出場の北京大会の姿とは雲泥の差を感じた。
「魔物」と呼ぶ五輪独特の緊張感。「北京の時は来るな、来るなという感じだったが、今回は違う。魔物を受け入れつつ、自分の射撃をコントロールできた」と手応えを口にする。この日の朝はヨガをして集中力を高める余裕もあった。
メダル取りの鍵は緊張感とどう向き合うかだと、正月の取材時も話していた。「外国人選手はプレッシャーとの付き合い方がうまい。自分もそれを身に付けたい」。数多くの遠征の中で培った技術面の向上も、自信を支えているようだ。
次戦からは得意とする50メートルの伏射と3姿勢。中でも1181点の日本記録(世界記録は1186点)を持つ14日の3姿勢ではメダルが期待できる。魔物を味方に引き入れ、力に変えて、引き金を引く。そんな姿をしっかり伝えたい。