学識経験者や経営者らで構成する財務相の諮問機関「財政制度等審議会」が、2019年度予算編成に関する建議(意見書)をまとめ、麻生太郎財務相に提出した。

 財政審は毎年、予算編成に関する提言をまとめている。今回は、今年末が平成最後の予算編成となることから30年間の「平成財政」を総括したのが特徴だ。

 国の債務残高は、平成当初の1990年度末比で5・3倍に当たる883兆円に達している。このため、財政健全化に向け来年10月の消費税率引き上げを確実に実施すべきだと強調した。その上で、増税に備えた景気対策は財政規律を重視し、効果的な方策に絞るようくぎを刺している。

 ところが、安倍政権は財政審の指摘を歯牙にも掛けないように見受けられる。

 税率引き上げは決めたものの、増税対策として景気下支えの方策を次々と打ち出すなど、「ばらまき」の色彩が強まっている。財政への危機意識が感じられず、遺憾と言わざるを得ない。

 建議では、債務が膨らんだ要因として、社会保障費の負担が増大する中、痛みを伴う改革ではなく赤字国債で財源を賄い、将来世代がつけを支払う構図が定着したと指摘。財政当局が「負担の軽減・先送りを求める圧力」に抗しきれなかったため、と断じた。

 チェック機能を欠いた政府や国会を厳しく非難し、将来世代を「悲劇の主人公」と言い切っている。歳出改革が進まないことへの強い危機感の表れだ。

 政府が目標とした2025年度までの国・地方の基礎的財政収支の黒字化を、「背水の陣」で達成するよう要望するとともに、新たな時代では財政再建を着実に進めることも求めている。

 どの政権も財政再建を喫緊の課題としながら、本格的な対応を先送りしてきた。建議では、その理由や背景を自らの反省も交えて振り返っており、教訓になろう。

 財政審は提言内容が国民に届いていないとの反省から、インターネット交流サイト(SNS)の利用を検討するとした。財政再建には、いかに国民の理解と協力を得るかも重要になる。さまざまな方法を駆使して情報発信に努める必要がある。

 財政審の現状認識に引き換え、政府・与党の財政規律への対応はあまりに楽観的すぎないか。

 増税対策として政府がまとめた9項目には、5%のポイント還元やプレミアム付き商品券、増税と直接関係のない防災対策の公共事業などが盛り込まれている。

 来年の参院選対策との思惑が透けて見え、与党内からも実質的な「減税」との声が出ているほどだ。

 財政規律を重視しているとは到底思えず、「平成の過ち」を繰り返すことになりかねない。安倍政権は、財政再建への責任を負っていることを忘れないでもらいたい。