徳島県内にあるさまざまなお店の定員さんに、売れ筋やお勧めの商品を紹介してもらう「U.S.A(売れ筋.商品.阿波)」。第2回は附家書店松茂店さんにご協力いただき、「寒い夜にゆっくり読みたい」おすすめの本を紹介していただきました。

附家書店松茂店 書籍館の内観

 紹介してくれるのは附家書店松茂店で働く曽我部 遥さん(24)、立石 みどりさん(33)、西川 千聖さん(23)。



あたたかい一冊》

「みをつくし料理帖」シリーズ 髙田郁 

 

書店員さんからのコメント

 大切な人を思い丁寧に料理を作る。忘れてしまいそうな、そんな気持ちを思い出させてくれるあたたかい物語です。せつない恋心や人情も心に染みて、涙を誘います。巻末のレシピで澪ちゃんの料理が作れますよ。



やさしい一冊》

「桜大の不思議な森」香月日輪

 

書店員さんからのコメント

 緑したたる山々と森に優しく抱かれるようにしてある黒沼村。季節によってもたらされる実りを使ったおいしい料理や村の優しい人々との交流。村で起こるさまざまな不思議を描いた心の深奥を揺さぶる物語です。



おいしい一冊》

「村上朝日堂はいほー!」村上春樹

 

書店員さんからのコメント

 特別コロッケが好きではない私がふいに思い出し、無性にコロッケを食べたくなる時がある。物語に登場する「うさぎ亭」のコロッケ定食である。随分前にこのエッセーを読み、それ以来このコロッケが頭から離れない。無数のパン粉がはじけるように粒立ち、中のポテトと牛肉がはふはふととろけるように熱い。芸術品といっても差し支えないコロッケの様子が描かれている。
 私は何度も読み返し、すでに食べた気分になっているくらいなのだが、いつか「うさぎ亭」のカウンターに座ってコロッケをほおばることが夢のひとつである。



おそろしい一冊》

「レキシントンの幽霊」村上春樹

 

 「これは数年前に実際に起こったことである―」という文章からはじまるこの物語の世界を時々思い出す。郊外の町レキシントン。広い林のような庭をぬけてあらわれる古い屋敷、時の流れがぴたりと止まっているかのような音楽室、海の底にいるような静かな夜。目を覚ますと、どこからも来るはずのない人々の談笑と古い音楽が聞こえる。何度も読むうちに、その美しい世界と深くぼうぜんとした恐ろしさが、まるで自分のものになったかのような感覚に陥ってしまう。私にとって特別な物語のひとつです。



いとしい一冊》

「私が大好きな小説家を殺すまで」斜線堂有紀 

 

 歪(いびつ)な愛が救いになった。純粋な愛が凶器に変わった。才能を失った天才小説家を救うために、彼のゴーストライターになった少女。2人の幸せを守るためのこの決断が、やがて彼らを追いつめていく。『憧れの相手が見る影もなく落ちぶれてしまったのを見て「頼むから死んでくれ」と思うのが敬愛で「それでも生きてくれ」と願うのが執着だと思っていた』。幸せを思い、しかし崩壊を願わずにはいられなかった2人の話。愛する者を持つ人すべてに読んでほしい一冊です。



附屋書店松茂店(松茂町中喜来

 

 営業時間=午前10時~午後11時
 定休日=年中無休
 問い合わせ〈電088(683)4721〉