戦時中に三菱重工業に動員された韓国人元徴用工5人の遺族と、元朝鮮女子勤労挺身(ていしん)隊員ら5人が同社に損害賠償を求めた2件の訴訟の上告審で、韓国最高裁が請求通り、賠償を命じる判決を下した。

 最高裁は先月にも同様の判決を出しており、司法の流れが確定したと言える。

 韓国人の個人請求権問題は、1965年の日韓請求権協定で解決済みというのが日本政府の立場である。

 協定は日韓の国交正常化の基盤となったものだ。それを覆す司法判断が立て続けに出されたのは、極めて遺憾と言わざるを得ない。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は、判決を尊重するとしながら「被害者の傷が癒やされるよう努力する」と表明している。これ以上、日韓関係を冷え込ませないためにも、早急に適切な対応を取るよう求めたい。

 判決で最高裁は、日本の不法な植民地支配に直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の請求権は、協定の適用対象外だと結論付けた。

 しかし、韓国の歴代政権は日本と同じく、元徴用工らの請求権は消滅しているとの立場を取ってきた。2005年に協定の効力を再検証した盧武鉉(ノムヒョン)政権も、解決の範囲内だと改めて確認している。

 最高裁は、協定への不満が強い国内世論を意識したのだろうが、国際的に通用する判断とはとても思えない。

 同種の訴訟は他に10件以上あり、追加提訴の動きも見られる。いずれも原告が勝ち、日本企業が賠償を拒めば、韓国内の資産を差し押さえられる事態になりかねない。

 韓国は知日派の李洛淵(イナギョン)首相が対応策を取りまとめ、年内にも方向性を打ち出す方針だという。政府や企業が出資して基金を創設し、元徴用工らに補償する案が浮かんでいるとの見方もある。

 実現させるには、被害者や遺族、国民の理解を得ることが欠かせない。それを担うのは韓国政府の務めである。

 日本も韓国の国民感情を刺激しないよう、冷静な姿勢が必要だろう。

 今年は未来志向をうたった「日韓共同宣言」の発表から20年になるが、残念ながら、宣言に逆行する動きが目立っている。

 先週には、元従軍慰安婦らの支援事業を進めてきた「和解・癒やし財団」の解散を韓国政府が発表した。

 財団は、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した15年の日韓合意に基づき、日本が拠出した10億円を元手に設立されたものだ。

 これまでに、存命だった元慰安婦47人のうち34人に現金を支給するなどの実績を上げてきた。にもかかわらず、一方的に解散を決定したのは到底納得できない。

 韓国政府は、日韓合意の破棄は求めないとしているが、これでは国際社会から約束を守れない国と見なされよう。この問題でも、責任ある対応を取らなければならない。