かかりしほどに法皇は・・・。「平家物語」の朗読会場にふさわしい、しつらえとは。来場者に五感を満たしてもらえるには、と考えたに違いない

 徳島市のホテル、壇上を飾ったのは13メートルもの竹を裂いて曲げ、生け花を渦状に囲んだ作品である。アセビの緑とグロリオサの赤が鮮やか。約6メートルの拝宮和紙が4枚、スクリーンとして掲げられ、品を高める。昼食が詰まった遊山箱は懐かしく、うれしくもなる

 峰の白雪消えやらで谷の氷柱(つらら)もうちとけず・・・。古典の美しさや調べを大切にしてきた岩瀬弥永子さん=元四国放送アナウンサー=による朗読ライブに行った。いにしえの恋の物語。抑制の効いた語りが胸にすーっと入ってくる。「伴走」したのはパーカッションである。その音が情感あふれる世界へといざなう

 ふと思った。草月流生け花の斬新さとも、手すきの温かみのある和紙とも、そして桃の節句などによく使われてきた徳島の伝統工芸品とも、かみ合っていると。徳島の「あるもの」が心強いことにも気付く

 思えばこのごろ、目は遠くにいきがち、耳は駆け巡る情報をいち早くと焦るばかり。「足元に咲く花」があるのも忘れそうになっていた

 平成最後の師走である。気ぜわしさをいさめ、いさめしながらも、五感を研ぎ澄まそう。この冬の音、味、香りをゆっくりと楽しみたい。