「事実上の移民解禁」との指摘もある重大な政策転換である。徹底的に問題点を洗い出す「熟議」こそ必要なはずだ。それを置き去りにしたまま、再び「数の力」で押し切るようなことがあってはならない。

 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案が参院で審議入りした。

 衆院で与党側は、採決を強行して野党の抵抗を封じ、改正案を通過させた。議論軽視は、費やされた時間にも表れている。衆院法務委員会での質疑時間は15時間45分。働き方改革法の33時間27分を下回り、安全保障関連法の108時間58分には、はるかに及ばない。

 単純労働の受け入れに道を開き、「国のかたち」さえ変える可能性のある法案にもかかわらず、あまりにも短いのではないか。

 与党が法改正を急ぐのは、人手不足に悩む経済界や地方の要請があるからだ。来年4月から新制度を開始できれば、「最大の地方創生対策」(政府関係者)として、来夏の参院選にもプラスに働くとみているのだろう。

 改正案は、特定技能1号と2号の新在留資格の設置を柱に据える。一定の技能が必要な業務に就く1号は、在留期限が通算5年で家族の帯同を認めない。熟練技能が必要な2号は、期限が更新でき、配偶者と子どもを呼び寄せることも可能としている。

 詳細な制度設計は、成立後に策定する基本方針、分野別運用方針、法務省令に先送りした。導入ありき、その後は白紙委任せよ、といった姿勢だ。国会軽視も甚だしい。

 受け入れ見込み数も、制度導入から5年目までの累計で最大34万5150人としているが、これすら未確定の数字だという。

 1号取得者の約半数は、現在約26万人いる技能実習生からの移行組となる見通しだ。新資格の「土台」ともなる制度といえるが、実習とは名ばかりで、低賃金で労働力を確保する手段となっている場合も多く、賃金不払いや違法な長時間労働が社会問題となっている。

 人手不足がいかに深刻でも、この状況を放置して新制度を導入するわけにはいかないはずである。受け入れるのは、人であって単なる労働力ではない。外国人労働者の人権をどう保障するか、地域の一員としてどう迎えるかなど、解決しなければならない課題は多い。

 シャープの亀山工場(三重県亀山市)で働いていた日系外国人作業員のうち千人が、今年に入り集中的に雇い止めされたことが11月末、明らかになった。外国人労働者の労働環境が整備されない限り、こうした問題が今後も繰り返されるだろう。

 ここに来て野党の足並みも乱れている。国民の懸念払拭につながる議論がしっかりとできるかどうか。今こそ「良識の府」として、参院は責務を果たすべきだ。