おたふくかぜを軽い病気と考えている人がいます。特に「子どものうちに罹った方が軽く済む」との考えで、自分の子どもをおたふくかぜの患者さんに接触させて罹らせようと試みる人がいますが、これはとても危険な考え方です。今月はおたふくかぜとその後遺症である難聴について考えてみました。
おたふくかぜはウィルスによって発生する耳下腺や顎下腺、舌下腺の腫脹と疼痛を特徴とする疾患です。おたふくかぜは唾液に含まれるウィルスの接触や飛沫感染によって伝染します。耳下腺腫脹の6日前から腫脹後5日間ほどウィルスが排出されると言われます。潜伏期間は2~3週間です。症状の現れない不顕性感染も多いと言われます。
おたふくかぜは神経系組織や内分泌系の腺組織に炎症が及びやすい病気です。耳下腺や顎下腺などの唾液腺組織に感染するとともに合併症として精巣炎、卵巣炎、膵炎、腎炎、髄膜炎、髄膜脳炎および感音性難聴があります。合併症で最も多いのは髄膜炎ですが、最も重いのは感音性難聴です。
思春期以降に発生する精巣炎は20~40%、卵巣炎は5%程度見られるとされます。精巣炎の後には精巣の萎縮や精子数の減少が見られますが、不妊症の原因になることは少ないとされます。
おたふくかぜはワクチンで予防できる病気です。世界中の先進国でおたふくかぜワクチンが定期接種になっていないのは日本だけです。ワクチンの副反応と効果を十分に考慮して、出来るだけ早くおたふくかぜワクチンを定期接種にしてもらいたいものです。