おたふくかぜが問題になるのはその合併症です。このウィルスは神経系組織や内分泌系組織に感染することが知られています。特に多い合併症は無菌性髄膜炎ですが、重篤な合併症は感音性難聴です。
おたふくかぜによる難聴は多くが重症です。難聴の発生頻度について、2015~2016年の流行時に日本耳鼻咽喉科学会の調査では少なくとも359名に難聴が発生しています。多くは片側に発生したものですが、少数で両側性難聴も見られ、いずれも重症難聴であったとされます。年齢は幼児から学童に最も多く発生していますが、次いで子育て世代の、特に女性に多く発生しています。これは子どもと接触する機会が多いためと思われます。
おたふくかぜによる難聴は発生すると軽症や中等症でも進行して重症になることが多いと言われます。また難聴は片側であっても集団生活の中では大きなハンディキャップになります。
おたふくかぜはワクチンで予防できる病気ですが、現在おたふくかぜワクチンは任意接種で、日本での接種率は30~40%とされます。1989年4月におたふくかぜワクチンは麻しん風しんと共に定期接種になったことがあります。この時、おたふくかぜワクチンによる髄膜炎が沢山発生したために中止されました。
おたふくかぜによる難聴を予防するためにはワクチンを定期接種にして日本からおたふくかぜの流行をなくすことが一番です。しかし現状では定期接種になるまでには年月がかかりそうです。そこで自分の子どもを守るためには任意接種であってもワクチンを受けておくことが大切です。