成り行き次第では世界経済を揺るがす波乱要因と目されていたトランプ米大統領と中国の習近平国家主席による会談は、不公正貿易の是正に向けた協議を始めることで合意し、折り合った。

 米国が中国からの輸入品2千億ドル(約23兆円)分に対する追加関税を巡って、来年1月に予定していた10%から25%への税率の引き上げを猶予するという。

 「貿易戦争」の一段の激化が回避されたのは評価できよう。これを機に、米中は対話を続け、早期に貿易戦争を終わらせなければならない。

 今回、覇権争いをいったんやめ、歩み寄ったのは、激しい制裁合戦で米中ともに影響が出ているからだろう。トランプ氏が重視する株価が不安定になり、経済にも影を落としている。中国では、輸出企業の生産が落ち込み、習指導部には社会不安を引き起こしかねない景気失速への危機感が強くあるという。

 歩み寄ったとはいえ、「新冷戦」と呼ばれるほどの深刻化している事態を解消したわけではない。抜本的な解決に向けては、埋めがたい隔たりが残る。両国間には、通商問題に限らず、軍事や人権問題も横たわる。

 トランプ氏は巨額の貿易赤字や先端企業の技術移転強要などを取り上げ、制裁関税の拡大に触れたようだ。

 中国は今回、米国からの輸入を大幅に増やすなどの姿勢を見せたが、国有企業の優遇是正などは、国家戦略の根幹に関わる問題だ。容易には受け入れられまい。

 トランプ氏と習氏は昨年4月に行った初の首脳会談で、貿易不均衡問題の解決に向けた「100日計画」を策定することで合意したが、立ち消えとなった経緯もある。

 今回の会談で、追加関税率の引き上げ凍結に設定された猶予は90日間だ。協議の行方が注目されるが、この間に何らかの成果が上げられなければ、貿易戦争は再び激しさを増し、世界経済に悪影響を及ぼすのは必至である。

 相次ぐ自然災害で7~9月の実質国内総生産(GDP)がマイナス成長に転落した日本にとっても、米中の貿易戦争は大きな懸念材料だ。

 米の追加関税が拡大するようなことになれば、中国の拠点から米国に製品を供給する日本企業には痛手となる。設備投資などにも慎重にならざるを得なくなる。

 残念だったのは、米中首脳会談の直前に閉幕した20カ国・地域(G20)首脳宣言で、「保護主義と闘う」という文言が米国の反対で削除されたことだ。「米国第一主義」を貫くトランプ氏の強硬姿勢をこのまま見過ごすことはできない。

 日本は来年、議長国を務める。安倍晋三首相は、米中首脳と相次いで会談したが、大事なのは、引き続き米中双方に自制を促していくことである。自由貿易を推進し、国際社会の結束を図っていく必要がある。