移住者が営んでいるピザ店を見学する参加者(右側)=神山町神領

 神山町で、移住者が営む店舗や企業のサテライトオフィス(SO)を巡る町民向けの無料バスツアーが人気だ。移住者の活動は新聞やテレビで取り上げられているものの、住民にとってはなじみが薄い。そんな現状を知った町と一般社団法人「神山つなぐ公社」が企画した。2016年10月に始めて以降、延べ500人以上が参加している。

 ツアーは町民と町出身者、在勤者が対象。移住者が営む飲食店や物販店、SOなどを10カ所程度訪れ、店主らに仕事の内容や町内に移ってきた経緯などを語ってもらう。

 神山町は、地方創生事業の成功例として知られており、国内外の企業や行政関係者らの視察が多い。その一方で、住民からは「新聞で見たけど行ったことがない」「用事もないので行きにくい」といった声が上がっていた。そこで実際に訪れてもらう機会を設けようとバスツアーを企画した。

 ツアーは月2回ほどのペースでこれまでに42回実施し、延べ538人が参加。代表者と相談してツアーの計画を立てるなど細やかな対応が評判を呼び、多いときには月に4回行う時もある。利用者は60、70代が多く、住民有志のグループや婦人会、同窓会などの団体が活用している。

 11月26日に行われたツアーには、町成人大学の受講生16人が参加し、移住者が営むピザ店やSOなど11カ所を巡った。西森章江さん(64)=同町上分=は「神山に住んでいながら、こんな新しい店や施設があるとは知らず驚いた」と話した。

 神山つなぐ公社の杼谷学代表理事は「神山の今を知ってもらうとともに、町の課題や将来について考えるきっかけにしてほしい」としている。