政府が年内の策定を目指す新たな防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」の姿が明らかになってきた。

 優先事項に挙がっているのは宇宙やサイバー、電磁波といった新領域での対応能力の向上である。人工知能(AI)など最先端技術にも重点投資するという。

 「新たな戦場」といわれる新領域では、各国が急速に能力を高めている。日本は出遅れが指摘されているだけに、優先させるのだろう。

 だが、苦しい財政状況の中、防衛予算は膨らみ続けている。第2次安倍政権の発足以降、6年連続で増加し、2019年度の要求額は過去最大の約5兆3千億円に上る。

 大綱は向こう約10年間の整備目標の指針となるものだ。防衛予算の「聖域化」に拍車を掛けることがないよう、必要性や効率性の観点から厳しく精査しなければならない。

 特に巨費を要するのは、米国から購入する地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」である。土地造成費などを含めると、2基で4千億円を超える見通しだ。

 北朝鮮の脅威に対抗する目的だが、1基目の配備まで約6年もかかる。配備候補地の秋田、山口両県では、首長や住民から反対の声が上がっている。費用対効果の問題もあり、見直すよう求めたい。

 さらに見過ごせないのは、政府が海上自衛隊の護衛艦「いずも」を事実上、空母化する構想を示していることである。

 いずもは空母と酷似し、甲板を改修すれば戦闘機を積むことができる。搭載機には、短距離離陸と垂直着陸が可能な米国製のF35B最新鋭ステルス戦闘機を想定し、数十機を新規調達する方向だ。

 政府は、基地のない太平洋の防空や南西諸島の防衛力強化のほか、災害時の拠点などとして使用する考えだという。岩屋毅防衛相は、他国に打撃を与える能力を持たせることが目的ではないと説明している。

 名称も「空母」とするのを避け、「多用途運用護衛艦」と呼ぶ方針を決めた。

 しかし、ステルス性や対地攻撃能力がある戦闘機を積める「空母」を持てば、周辺国の警戒と反発を招くのは必至だ。いくら防衛目的に限ると強調し、呼び名を変えても説得力に欠けよう。

 戦後、政府は一貫して「自衛のための必要最小限度を超えるため、攻撃型空母の保有は許されない」としてきた。専守防衛を掲げる以上、当然である。

 いずもの空母化は、専守防衛を骨抜きにすると言わざるを得ない。

 新大綱を巡る与党のワーキングチームの会合では、「攻撃型空母は持たない」としてきた過去の政府の国会答弁との整合性を疑問視する意見が出たという。

 安全保障環境の変化に対応するのは重要だが、「空母」は本当に必要なのか。いま一度、考え直すべきである。