天和元年にカステラを作り始めたというから337年になる。長崎市の松翁軒。その足跡に小冊子「よむカステラ」が加わったのは平成7年である

 埋もれそうな歴史や味、匂い、人物などに焦点を当て、作家や音楽家、詩人らが書きつづる。そこには生まれ育った古里ではないのに、古里に寄せる温かさが宿っている

 発刊したのは、古きよき地元を伝えていた「長崎手帖」を継ごう、との決意だった。「筆一本を糊口(ここう)の支え」とした発行人の遺志に応えられる小冊子にしたい

 「よむカステラ」は毎年1冊刊行され、元号が変わる来年は25号となる。節目を前に先日、コメディアンの小松政夫さんを招いて「九州、長崎ば、好いとっと座談会」を開いた。母親は長崎・西海市が生まれ故郷。定時制高校に通いながら博多の菓子店で働いたことや「親父さん」と呼んだ故植木等さんとの思い出を語ったという

 小松さんは自著で、植木さんが先祖や家族、師、友、天地を拝む「六方拝」についてよく言っていたと書いているが、自身も古里や師への感謝を忘れていない。「のぼせもん」のもう一面を見る

 24号は、方言など「言葉はその人の歴史である」を主題とした。さて次号は、と聞くと「古里と根っこでつながることの大切さをテーマにしたい」と発刊の志を引き継ぐ山口喜三社長は言う。