外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案が参院で可決、成立した。議論継続を求める野党の声を押し切り、政府・与党は採決を強行した。

 数の力に任せた国会運営がまたも繰り返されたことに、失望する。

 一連の審議で明確になったのは、現行の技能実習生制度の下で、多くの外国人が劣悪な雇用環境や人権侵害に苦しんでいる実態である。

 だが、実習制度が十分検証されたとは言い難い。改正法の新制度にしても、対象業種や技能水準など大事な部分が具体化されていない。適正に機能するか疑わしい限りだ。

 法務省が昨年度に失踪した2870人の実習生を調査したデータからは、67%の1939人が最低賃金を下回っていたことが判明した。約10%の292人は、残業時間が「過労死ライン」とされる月80時間を超えていた。

 いずれも野党の分析で明らかになったものだ。法務省は、失踪の原因が最低賃金未満だったのは1%足らずと説明していたから、あぜんとする。事実を矮小(わいしょう)化しようとしたのなら言語道断である。

 新制度は一定の知識や経験を要する「特定技能1号」と、熟練技能が必要な「同2号」の新たな在留資格設置が柱。大半は1号が適用され、政府は来年度に最大4万7千人、5年後には計34万5千人を上限に受け入れるという。

 1号は、実習生として3年たっていれば無試験で資格を得られ、さらに5年の在留が認められる。つまり最長で10年間、日本で働くことができるようになる。

 技能実習生制度が新制度の土台になっているのは明白である。だが安倍晋三首相は「両制度は別物」との見解を強調。実習生にのしかかる長時間労働や低賃金の問題に、最後まで向き合おうとしなかった。これでは議論がかみ合うはずはない。

 職場から失踪する実習生は急増しており、昨年は7089人と過去最多、今年も1~6月で4279人に上る。15年からの3年間に計69人が死亡していたことも判明した。自殺も含まれているという。

 背景を見極め、手だてを講じなくてはならない問題であるにもかかわらず、審議で解決策を探らなかった。新制度の詳細も後に政令や省令で定めることとしており、政府の姿勢は理解に苦しむ。

 大島理森衆院議長は、政省令を含めた法制度の全体像を来年4月の施行前に、政府から国会に報告させるという裁定を出している。

 個別の審議案件に対して議長が注文を付けるのは異例である。政府は、審議の進め方への戒めであると重く受け止めなくてはならない。

 改正法が成立したとはいえ、現状で新制度に踏み切れば不信感が増すだけである。
政省令は原則として国会の議決を必要としないが、政府は早期に全体像を示すとともに議論の場を設けるべきだ。