ベトナム人のマイさんは、静岡の機械メーカーで働くシングルマザーの実習生。将来の生活を考え、娘を母親に預けて日本へ来た。周りは親切で業務も順調だけれど、娘を思うと寂しくてならない。連絡を取るたび、涙に暮れていた
ある日、社長に言われた。旧正月に一度帰りなさい、と。年明け約1カ月後の旧正月は「テト」と呼び、最も大切にしている祝日だ。休暇は10日間。実習生には珍しい長期で、しかも旅費は会社持ち。慣習やマイさんの事情を理解した社長の心憎い配慮である
喜びをつづった作文が、外国人実習生らを対象とした本年度の日本語作文コンクールで入賞した。「会社の発展のため(略)もっともっとしっかりしなければと心に誓いました」と書き、感謝の言葉で締めくくっている
温かい会社である。だが悲しいかな、実習生に優しくない事業所は多い。本県も例に漏れず
県内では一昨年、実習生の受け入れ事業所のほぼ3分の2が労働法令に違反していた。近年は月100時間を超える残業や、給料が最低賃金より低いといった悪質事案が絶えない
一片の情もない事態が横行している。抜本対策を見いださないまま、入管難民法が改正された。働く外国人は間違いなく増える。人権週間に成立したというのに、彼らの人権を確実に守ると胸を張れるだろうか。