きっぱりとやって来た冬を高野山で迎えた。りんとした杉木立の間、いかにもぎょうさんな大名の墓を横目にさらに歩くと、行き着く所が奥之院。空海は、今もこの地にとどまり、御廟で祈りをささげている

 とにかく寒いのを我慢すれば、高野山は冬がいい。大勢の参拝客があふれる観光シーズンはがやがやとして、趣という点で劣る。12月ともなれば人影はまばら。頬を刺す風に身も引き締まる心地だ

 20万基を超すとされる墓の中には企業の慰霊碑も。作業員の像が立つのは日産自動車。時期も時期である。男たちの言いたいことは聞かずとも分かる

 この宗教都市では外国人の姿が目立つ。高野山真言宗・宗務総長公室長の山口文章さんによると、世界遺産に選ばれて以降、一層増え、今や宿坊宿泊者の4割を占める。「東洋の神秘」を求める欧州の人が多いそうだ

 宿坊で過ごした翌朝、「お勤め」に出た。開創以来1200年、故人も含む人々の平安を願い、読経は続いてきたのである。思えばありがたいが、いやはや早々に膝を崩す罰当たり。静かに寺外へ流れ出した僧侶の声が、山の霊気に溶けていった

 山口さん直伝の弘法大師の教えを一つ。栄枯盛衰は、すべて人にかかっている。人は、正しい道を進むかどうかに。<物の興廃は必ず人による。人の昇沈は定んで道にあり>。