高速道路の追い越し車線に車を止めれば、事故も起きて当然だ。その結果、2人を死なせたなら、原因をつくった者は重い責任を負う。社会の了解事項だろう

 あおり運転を受け無理やり停車させられた夫婦が、後続のトラックに追突されて死亡した事故で、横浜地裁は危険運転致死傷罪などに問われた男に懲役18年を言い渡した

 パーキングエリアでの駐車方法を非難されて逆上、高速道路で4度にわたる妨害行為、揚げ句の事故。「常軌を逸しており、強固な意志に基づく執拗(しつよう)な犯行で結果は重大。家族旅行の帰りに突然命を奪われた無念は察するに余りある」

 判決は、あおり運転と夫婦の死亡に因果関係があると認め、危険運転致死傷罪が成立すると判断した。ところが、だ。そうならない結果もあり得たのである

 弁護側は事実関係を認めた上で、法に規定がない停車後の事故に危険運転の罪は適用できないと反論し、そう解釈するほかはないとする専門家もいた。まるで根拠のない言い分でもない。法の不備は直ちに正す必要がある

 男の行為は殺人にも等しい。「殺人罪で裁かれない限り、納得できない」と夫婦の親友は言う。両親を奪われた子どもたちのことを思えばなおさら、その通りだと個人的には思う。明日はわが身である。あおり運転にもっと厳しい世の中であっていい。