巨大地震の前兆があった場合、どんな行動を取るべきなのか。

 政府の中央防災会議が、南海トラフ巨大地震につながる異常現象が観測された時の対応を、報告書にまとめた。

 東西に長い南海トラフ震源域の半分でマグニチュード(M)8級の地震が起きた「半割れケース」で、残り半分の沿岸住民に、政府が1週間程度の一斉避難を呼び掛けるとしたのが柱だ。

 「いつ来るかも分からないのに」と、住民から戸惑いの声が上がるのは当然だろう。だが、あらかじめ逃げておけば、津波から確実に身を守ることができる。

 最悪で30万人以上、徳島県内でも約3万人の死者が出るとされる南海トラフ地震である。空振りに終わったとしても、命には代えられない。

 自治体は「その日」に向けて、しっかりと備える必要がある。住民も的確に行動できるよう、減災への意識を高めることが大切だ。

 中央防災会議が異常現象と想定したのは、半割れと、規模が一回り小さい「一部割れ」、揺れを感じない程度の地殻変動が生じる「ゆっくりすべり」の3ケースである。どの場合でも気象庁が「臨時情報」を発表し、巨大地震発生の可能性が高まったと国民に周知する。

 一斉避難の呼び掛けは半割れに限り、一部割れでは必要に応じて自主避難を促すとした。ゆっくりすべりは、避難場所・経路などの再確認を要請するにとどめる。

 半割れを重視したのは、二つの先例があるからだ。いずれも東側で起き、1854年は32時間後、1944年には2年後に西側も同規模の地震に襲われた。

 半割れの後、反対側で1週間以内にM7級の地震が起きるのは、十数回に1回だという。甚大な被害が見込まれるだけに、決して無視できない確率である。

 一斉避難は、地震発生から30分以内に30センチ以上の津波が押し寄せる沿岸自治体が対象だ。徳島県内では徳島市など8市町が該当する。逃げる時間が少ない地域や高齢者、障害者らにとっては、事前避難の必要性はとりわけ高いと言えよう。

 問題は避難所を十分に確保できるかどうかだ。学校が指定されている場合が多いが、発生が不確定な地震のために1週間も授業を休めるのか。

 避難路の大渋滞が予想される上、介護を要する人への対応や避難所の運営、費用をどうするかといった課題もある。どれも負担が重く、自治体だけで対処するのは難しい。一層の広域連携が求められる。

 政府は報告書を基に、対応を例示した指針を取りまとめるという。自治体や企業が役立てられるよう、具体的で分かりやすい内容にしてもらいたい。

 財政を含めハード、ソフト両面で支援を強める必要があるのは言うまでもない。