エメラルドグリーンの美ら海に、茶色い土砂が投げ込まれて、沖縄県の民意が踏みにじられていく。

 もとより、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設反対を掲げる玉城デニー知事と、辺野古移設が「唯一の解決策」とする政府が直ちに折れ合う状況にない。

 ならば埋め立てを進めて既成事実を作ろう、という政府の思惑が透けて見える。

 つい2カ月半前の県知事選で沖縄の人たちが示した民意に平気で背を向ける。そんな日本であってよいのか。

 政府は辺野古沿岸部で始めた土砂投入を中止すべきだ。

 玉城知事は会見で「県の要求を一顧だにせず、土砂投入を強行したことに激しい憤りを禁じ得ない」と厳しく批判し「国のやり方は絶対に認められない。あらゆる手段を講じていく」と述べた。

 国との対話は継続しながらも、知事の権限を最大限に行使し、辺野古移設に反対する構えだ。

 来年2月24日には、辺野古移設の賛否を問う県民投票が実施される。玉城知事は反対の民意を得て、政府に移設断念を迫りたいところだ。改めて民意が示される県民投票の結果は、極めて重大である。

 沖縄県は、県による埋め立て承認撤回の効力を一時停止した石井啓一国土交通相の判断は「違法」として、総務省の国地方係争処理委員会に審査を申し出た。ただ、過去に県が申し立てた類似の審査と同じように、却下される公算が大きい。その場合、県は効力回復を求めて、高裁に提訴することも検討している。

 一方、菅義偉官房長官は記者会見で「全力で埋め立てを進めていく」と明言した。

 政府は11月、県と辺野古移設に関する集中協議を行ったが、溝は埋まらなかった。これも想定通りだろう。「沖縄県と話をした」という形を残し、埋め立てに踏み切る。原状回復が困難になれば、沖縄の世論の風向きも変わるとみているのではないか。

 日米が1996年、普天間飛行場の返還に合意したのは、95年に沖縄県で起きた米兵による少女暴行事件で、沖縄県民の反基地感情が高まったのがきっかけだった。

 市街地の中心部にあり「世界一危険な飛行場」とも評される普天間飛行場の危険性は、一日も早く取り除かなければならない。それなのに返還の時期は遠のくばかりだ。

 2013年に、日米は普天間飛行場について「22年度またはその後」に返還すると合意した。

 だが、辺野古で埋め立てが始まった日、岩屋毅防衛相は「一度承認された埋め立て(許可)が撤回されるなどの変遷があった。目標の達成はなかなか難しい」と述べ、返還合意の達成は困難との認識を示した。

 返還延期のしわ寄せを受けるのは、普天間飛行場の危険性や騒音に悩む県民である。

 政府は県民の不安、負担軽減に全力を尽くすべきだ。