滴翠クラブ12月例会が5日、徳島市の新聞放送会館であり、中小企業のコンサルティングを行う元気ファクトリー(松山市)代表の小島俊一氏が「社員を大切にする元気な組織の作り方」と題して講演した。小島氏は、経営不振に陥った老舗書店をV字回復させた経験を踏まえ、「社長自ら社員を愛し、コミュニケーションを取っていけば、社員に高いモチベーションが生まれ、社会の変化に対応していくためのイノベーション(革新)をおこしてくれる」と強調した。要旨は次の通り。 

従業員は財産、リストラ不要

 いくつか質問するので考えてほしい。まず「あなたの会社にとって従業員はコストなのか、財産なのか」。

 私は財産だと考え、愛媛県を中心に80店舗ある明(はる)屋(や)書店の事業再生に取り組み、正社員をリストラすることなく再建した。それが十分に可能だと伝えたい。

 全ての店舗の改善策を私が考えることはできないので、各店長に改革してもらった。そのため、店長らの意欲を引き出すよう「お前はどうしたいのか」と声を掛け続けた。全員参加でなければ組織は強くならない。

 自由にやらせる代わりに店長には数字目標を与え、数字的にコントロールした。常にコミュニケーションを取るようにもした。

 店長に数字目標を与えるには、経営者自身が決算書を見て問題点を読み取れないとできない。苦手とする中小企業経営者は多いが、少しの知識で読める。勉強することをお勧めする。

 次の質問は「あなたの会社は何を売っているのか」。言い換えれば「どんなことで社会の役に立っているのか」。この答えは短く言い切ることが大事だ。

 この視点がないと会社は勝ち残っていけない。商品を差別化するだけでは大手に対して価格競争でかなわないからだ。人は理念に共感する。理念をいかに正確に整理して発信するかが、事業経営で成功するための秘訣(ひけつ)だと私は思っている。

 客は捕まえに行けば逃げるが、自らが甘い蜜を持つ花になれば寄ってくる。前者が販売で、後者がマーケティング。「客はなぜあなたの会社を選んでくれるのか」。その理由も顧客視点で経営者自ら考えてほしい。

 経営の三大要素はファイナンスとマーケティング、組織のマネジメントだが、企業再生においては前の二つにばかり注目が集まっていないかと疑問に感じている。人をいかにやる気にさせるかについて、事業再生計画書に書かれることはまずないが、マネジメントが大切だと思う。

 物理的事象に向けるwhy(なぜ)を人にも向けていないだろうか。物理的事象は徹底した原因の追及が必要だが、人の問題において大切なのはその人の行動や意識の変容。原因を特定してもあまり意味がない。

 人は指示されたことはやりたくないものだ。問題があれば、理由の後に今後はどうするのかを問い掛け、課題解決の方向に導くことが必要。コミュニケーションを取っていけば、やる気を引き出すことができる。

 若者が離職する大きな理由の一つに、やりがいを感じられないことが挙げられる。仕事の結果を可視化しているだろうか。仕事を楽しいと思って生き生き働いてもらうためには、前に話した「何を売っている会社か」「何に貢献しているのか」を従業員にも伝えることが重要だ。

 小島 俊一(こじま・しゅんいち)さん 1957年福岡県生まれ。明治大政治経済学部卒。トーハン執行役員近畿支社長、同九州支社長などを経て、2013年、当時経営不振に陥っていた明屋(はるや)書店の代表取締役に就任。正社員をリストラすることなく業績をV字回復させた。17年から現職。中小企業のコンサルティングを手掛ける。著書に「崖っぷち社員たちの逆襲」。