来年10月の消費税増税への備えを優先し、財政再建はなおざりにした。経済格差の是正も不十分なままだ。

 与党が2019年度の税制改正大綱を決めた。目先の対応に追われ、抜本的な改革に手を付けないのは、安倍政権の経済運営と重なる。

 念頭には来年の統一地方選や参院選があるのだろう。だが、中長期的な視点を欠いていては、国民の将来不安を解消することはできない。

 消費税増税対策の柱は、自動車税の引き下げと住宅ローン減税の延長である。

 車の持ち主が納める自動車税は、来年10月以降に買った新車から下げる。住宅ローン減税は20年末までの入居者に適用し、期間を3年延長して13年とする。

 前回14年の消費税増税では、駆け込み需要の反動で消費低迷が長引いた。その対策はもちろん重要だが、増税後の新車購入から順次引き下げる仕組みでは、消費底上げの効果は不透明だ。

 住宅取得は低金利の長期化で過剰なほど進んでいる。これ以上、需要の先食いを促すことに疑問は拭えない。

 増税対策には、軽減税率の導入やキャッシュレス決済時のポイント還元、プレミアム付き商品券などもある。

 大盤振る舞いで懸念されるのは、財政再建がますます遠のくことだ。自動車税、住宅ローン減税とも代替財源の確保策は示されておらず、軽減税率の財源も十分に手当てができていない。

 そもそも、消費税率を上げる目的は財政の健全化と社会保障の充実である。対策費を膨らませ、増税の意味が薄れるようでは、負担を強いられる国民は納得できまい。

 消費税には、低所得層ほど負担が重くなる「逆進性」がある。それだけに、増税対策には低所得者への配慮がとりわけ求められる。

 にもかかわらず、減税対象は恩恵が限られる高額商品が中心になった。自動車や住宅の購入予定がない人には縁遠く、自動車税減税では手頃な価格の軽自動車は対象外だ。

 株式売却や配当への金融所得課税の税率を据え置いたのも問題だろう。海外と比べて低く、財務省が引き上げを目指したものの、株価への影響が懸念されて頓挫した。

 景気優先の名の下、富裕層優遇を温存した形だ。これでは、税が持つ所得再分配機能の回復など望めない。

 経済界が要望した減税が次々と決まった一方で、未婚のひとり親支援の議論は最後までもつれた。

 収入が少ない人を住民税の非課税対象に加えることで決着したが、婚姻歴の有無で差がある控除制度の見直しは先送りした。公明党が同等の扱いを主張したのに対し、保守的な家族観が色濃い自民党が反対したためだ。

 地方法人課税の偏在是正などでも課題が残った。社会の変化を見据えた改革が税制に求められていることを、忘れてはならない。