兵庫県の淡路島で官民によるにぎわいの場づくりが活発化している。島の人口が減り続ける中、大都市に近い立地を生かし、交流人口の拡大を島の活性化に生かそうとの機運が高まっているためだ。新たな観光スポットが次々と生まれ、徳島からの観光客にとっても魅力が増しそうだ。
神戸淡路鳴門自動車道の淡路サービスエリアにも近い国営明石海峡公園(淡路市)。国土交通省が1993年に公園整備を事業化し、計画総面積96ヘクタールの開発が進む。
四季折々の花を観賞できる花壇や池、散策路、大型遊具が設けられ、2002年の30ヘクタールを皮切りにこれまでに計40ヘクタールが開園した。17年度の入園者数は約52万人で、徳島県からの入園者は毎年、10%弱を占めている。
その明石海峡公園では今、大阪湾を一望できる海岸ゾーンの一部2・9ヘクタールで新たな計画が進む。うち1・1ヘクタールは、国営公園では全国で初めて民間に施設整備を任せ、レストランや売店、カフェ、体験施設などを整備・運営してもらう。
国交省明石海峡公園事務所(神戸市)の北村智顕事務所長は「民間の創意工夫を公園の魅力向上に生かしたい」と話す。10月に事業者の公募を始め、21年4月の開業を目指している。
同じ淡路市では、人材派遣大手のパソナグループ(東京)が人口減少対策として地域産業の活性化を図る事業を展開している。
08年に若者の就農支援を目的とする農園を始めたのを皮切りに、12年には廃校舎にレストランやベーカリー、マルシェを設けた複合施設、地元食材を使った料理を出すカフェなどを次々と同市内に開設している。
17年7月にはアニメ・漫画と自然を融合させたテーマパーク「ニジゲンノモリ」を県立淡路島公園内に、18年4月には創作オリエンタルレストラン「ハローキティスマイル」を開業。パソナグループ広報部は「淡路島は自然と食材が豊か。ここで地方創生のモデルをつくり、他の地域に広げたい」としている。
一方、淡路島で最近人気を集めているのは毎年秋に開かれるサイクリングイベント「淡路島ロングライド150」(淡路島くにうみ協会、兵庫県など主催)。島内1周150キロをコースとし、サイクリストたちに「アワイチ」と呼ばれて親しまれている。
参加者は1年目(10年)の1700人から増加し、今年9月の第9回大会は、前年より100人増やした2300人の定員が半月で埋まった。兵庫県淡路県民局未来島推進課の平岩一宏班長は「アワイチをきっかけに島を休日に訪れるホリデーサイクリストが増えている」と言う。
淡路県民局によると、淡路島は05年に15万人を超えていた人口が年々減り、今年10月には12万9800人と13万人を切った。定住人口が減る中で、いかに交流人口を増やし地域の活力を維持するかが課題だ。
これらのにぎわいの場づくりが成果を出しつつあるのか、淡路島への入り込み客数は11年度の914万1千人から、17年度は1301万2千人と42・3%増えているという。