安倍晋三首相は「経済再生と財政健全化を両立させる予算にできた」と述べたが、果たしてそれほど胸を張れる中身だろうか。

 2019年度当初予算案が閣議決定された。一般会計の総額は101兆4564億円と、当初段階で初めて100兆円の大台を突破した。前年度当初(97兆7128億円)から約4兆円増え、7年連続で過去最高を更新した。

 目に付くのは、19年10月の消費税率10%への引き上げに備え、2兆円規模の景気対策費を盛り込んだほか、社会保障費と防衛費がいずれも最高額となったことだ。

 税収増もあり、新規国債発行額は約1兆円圧縮させたものの、歳入の約3割を借金で賄う構図は消費税増税後も変わらない。

 増税が実現することで、財務省の財政規律が緩んだように見える。歳出抑制や財政再建への取り組みは不十分なままで、禍根を残す予算案と言わざるを得ない。

 消費税対策では、キャッシュレス決済時のポイント還元やプレミアム付き商品券発行などの消費下支えと、今夏の自然災害を踏まえ重要インフラの防災・減災対策にそれぞれ1兆円程度を充てた。

 キャッシュレス決済の普及は、現金の輸送費用を減らせ外国人観光客の誘致にも役立つとの考えだ。だが、決済端末の導入費用を敬遠し、二の足を踏む店舗は少なくない。

 日本のキャッシュレス化に向けた取り組みは、海外に比べて遅れており、政府は現在20%程度の比率を27年までに40%程度まで高める方針だ。そうなら臨時の増税対策でなく、成長戦略として本腰を入れて進めるべきだろう。

 増税による落ち込み以上に景気対策を手厚くしている。一時的な効果は期待できるにしても、不安材料が積み上がるだけだ。

 医療や介護・年金などの社会保障費は、今回も増額となった。増税分の使い道を変更し幼児教育を無償化することで規模が膨らんだ。だが、問題は受益と負担のバランスについての論議を避けたことである。現状の仕組みに切り込む覚悟が求められる。

 拡大を続ける防衛費は1・3%増の5兆2574億円になった。中でも看過できないのが、米国から購入する地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」やF35A最新鋭ステルス戦闘機だ。関連予算として計2440億円を計上した。

 中国や北朝鮮を念頭にしたものだが、これほどの巨費を投じる必要があるのか。今後の防衛体制を含め、国民に丁寧に説明してもらいたい。

 政府は、新規国債発行額の減少を強調するが、これは預金保険機構の利益剰余金を活用するなどして税外収入を増やしたためで、異例だ。

 日本の景気回復は戦後最長を更新する状況だ。この機を逃せば、財政再建がさらに遠のき、国民の将来不安も一段と増すことになろう。