那賀川を河口からさかのぼること1時間余り。緑の山々に囲まれた一角に突如として巨大な構造物が現れる。「長安口ダム」。幅200・7メートル、高さ85・5メートルと県内最大の規模を誇る。
治水、利水、発電のために造られた多目的ダムで、那賀川総合開発計画の一環として1950年に建設が始まった。56年に完成し、60年以上がたつ。
現在、大規模な工事が実施されている。管理する国土交通省が2007年度から取り組んでいる「長安口ダム改造事業」だ。
ダムは長年の月日によって予想を超える土砂が堆積し、貯水容量が減少した。近年の異常気象もあり、洪水調節容量を増やすために、放流ゲートの追加工事などが進められている。
水をためた状態でダム本体を切削し、放流ゲートを新設する。既存の機能を生かしたまま強化を図るのは、国内初の試みとなる。
すぐ下流にある長安吊橋(つりばし)から眺めると、工事の様子がよく分かる。新たなゲートも姿を現し、川床では多くの人がさまざまな作業に汗を流している。事業の完了は28年。巨大ダムの改造が続く。