今月に入り、来年4月の徳島県知事選に、5選を目指す現職の飯泉嘉門氏と、自民党県議の岸本泰治氏の2人が相次ぎ出馬の意向を表明した。共産党県委員会も候補擁立を急ぐ構えだ。知事選を巡る動きが加速し始めた。

 選挙で問われる最大の争点は「多選」になりそうだ。岸本氏は21日の会見で「5期20年は長すぎる。多選の是非を問いたい」と語り、出馬する最大の動機に挙げた。

 予算編成や人事権を握る首長の多選は、政策の継続性というプラスの半面、一般的に多くの弊害も指摘される。

 意思決定が独善化し、異を唱える者がいなくなる。人事の偏重や行政のマンネリ化により職員の士気が下がる。議会との緊張感が薄れる、といった点だ。

 飯泉、岸本両氏から推薦依頼を受けていた自民党県連は22日、対応を協議し、飯泉氏推薦を決めた。後藤田正純衆院議員が多選問題や党内からの出馬を背景に自主投票を求めたが、県連は「現職の実績を評価する」として退けた。多選を是とするか、非とするか。最終的に判断するのは有権者一人一人だ。候補者の主張に注意深く耳を傾けたい。

 飯泉氏は現職になって初めて保守系候補の挑戦を受けることになる。岸本氏が多選や、その弊害として、事業費が膨らみ続けたとくしま記念オーケストラ事業に対する批判の声を上げる中、どう説明責任を果たしていくのかが問われる。共産系候補も出馬すれば、この点は追及するだろう。避けて通れない大きな課題となる。

 選挙に臨む顔ぶれが出始めたことで注目されるのが、それぞれが掲げる政策だ。

 県内を見ると、雇用情勢は改善している。企業倒産も減少傾向にある。農産物の輸出額も増えている。訪日客が増えている地域もある。

 だが、県民が等しく「地方創生」の成果を実感できているとは言えない。人口減少の中で徳島の将来設計をどう描き、導くのか。重要な争点の一つだ。

 飯泉氏は、県議会で出馬表明した際に、大規模災害への備えや人口減少対策を重点課題に挙げたが、具体性はまだない。

 次の4年間で、さらに何を実行したいのか。地方創生の成果を実感できる徳島に変えられるのか。多選の懸念も加わるだけに、しっかりと目を凝らしたい。

 岸本氏は出馬会見で地方創生に絡む公約として、県外空港からの訪日客誘致、阿波踊りを中心とした県民主役の文化・観光の振興、ベンチャー企業の育成などを掲げた。

 出馬の決断から日が浅く、致し方ないところだが、こちらも具体性はまだ乏しい。多選批判と併せ、16年間の飯泉県政を「成果が全く上がっていない」と指摘する以上、その現状からどう抜け出すかの道筋を有権者は知りたいはずだ。選挙に向け、厚みを増す必要があるだろう。