地球の奥深くに巨大な空洞があって、そこには海があり平野があり、太古の生物が躍動している。空想科学小説の父、作家ジュール・ヴェルヌが「地底旅行」で描く地下世界である

 深くなればなるほど、大変な高温と地圧にさらされる。ヴェルヌも、その点は気にしていたようで、冒険者たちの手足が縛られないよう、一応の科学的な説明も試みているが、現代の視点に立てば、奇想天外の域を出ない

 いや、そうとばかりも言えないぞ、という発表が先日、米地球物理学連合の会合であった。各国の学者数百人が参加し、2009年から進行中の共同研究「深部炭素観測」の最新の成果というから、素性も確かなのだろう

 海底から、さらに2・5キロ掘り下げた地点に、大量の「深部生命体」が存在するそうだ。もちろん恐竜がうごめいているわけではないが、食料もない高温高圧の厳しい環境下、岩石から得られるエネルギーを頼りに暮らす生物がいるようである

 「われわれが知らないだけで、地下の生物の多様性は、地上と同じかそれ以上だ」と専門家は語る。人間の生活にも深く関わってきたのかもしれない

 気付かないうちに、見ず知らずの誰かに支えられていた、といったことは、ままあることだ。宇宙空間の支配さえもくろむわれら人類の知識も、まだまだ表面的なようである。