「米国第一」主義に走るトランプ大統領の抑え役がまた一人、政権を去る。

 政権内で「最後の国際協調派」と目され、米国と同盟国をつなぐ要となってきたマティス国防長官が、近く辞任することになった。

 直接の引き金になったのは、トランプ氏が突然、内戦下のシリアから米軍を完全撤収すると宣言したことだ。軍部などの反対を押し切り、独断で決めたことにマティス氏が激怒、翻意を促したが聞き入れられなかったという。

 シリアでの過激派組織「イスラム国」(IS)はほぼ壊滅状態にあるが、政権内でも撤収の話は出ていなかったというから驚きだ。

 同盟国を重視するマティス氏の離脱で、政権の反グローバリズムの傾向が強まり、欧州やアジア諸国との関係が揺らぐことが懸念される。

 日本政府も、今後の米国の外交・安保政策を注意深く見守る必要がある。

 トランプ氏とマティス氏の不仲は度々報じられていた。宇宙軍の創設やイラン核合意からの離脱表明、今回のシリア問題に加え、アフガニスタン駐留米軍の規模縮小など、さまざまな問題で意見が対立していたようだ。

 シリアをはじめ、中東全域で米国の関与が弱まればさらに混迷が深まるばかりか、米国を後ろ盾とするイスラエルやサウジアラビアなどへの影響も出てこよう。

 政権内や関係国との意見調整もせずに進めるのは、横暴と言わざるを得ない。与党・共和党議員も「国を危うくする深刻な過ちに向かって進んでいる」と指摘するほどだ。

 既にケリー大統領首席補佐官が年内に辞任することが決まっている。マティス氏の辞任で、昨年1月のトランプ政権発足時の外交・安全保障政策を担う主要メンバーが全員交代することになる。

 意に沿わない者は次々と切り、思いつくままに政策を変えていく。自身の予測不能な行動が国内だけでなく、同盟・友好国にも不信感を与えていることをトランプ氏は自覚すべきだ。

 マティス氏に代わり、来年1月1日にシャナハン国防副長官が長官代行に就任する。経済界出身で軍・外交経験は乏しいという。今後はトランプ氏の独断専行に拍車が掛かるとともに、国家安全保障を担当するボルトン大統領補佐官ら強硬派の発言力がこれまで以上に強まるとみられる。

 そうなれば、米軍駐留費の負担増要求や駐留米軍の規模縮小なども現実味を帯びてこよう。とりわけ、日本にとって気掛かりなのは、在韓米軍の縮小などが再燃し、アジア太平洋地域での米軍の影響力が後退することだ。

 来月下旬には日米首脳会談が予定されている。欧州やアジアなどさまざまな国との経済連携を進めている安倍晋三首相は、トランプ氏にその意義を強調しながら、日本の懸念や国際協調の重要性について訴えてもらいたい。