日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が、来年2月1日に発効することが確定した。双方がそれぞれ進めていた議会承認などの手続きが完了したためだ。

 発効すれば、EUが日本車に課す10%の関税を8年後に撤廃し、日本は農林水産物の8割で関税をなくす。

 輸入食品やブランド製品の値下がりが期待される。半面、生産者の一部には競争激化による経営危機への不安が広がっている。

 期待と不安が交錯するものの、自由貿易が拡大する意義は大きい。日本は好機と受け止め、打って出るべきだ。

 協定発効を控え、EUの通商担当閣僚マルムストローム欧州委員が、徳島新聞も参加した共同通信加盟社論説研究会の取材に、ブリュッセルのEU本部で応じた。マルムストローム氏の発言からEPAを展望してみたい。

 政府は、EPAが日本のGDPを約5・2兆円押し上げ、雇用を29万人増やす効果があると試算している。貿易の円滑化で自国の生産性が一段と高まるという見方は、EU側も一緒である。

 マルムストローム氏は「日本はとても魅力的な市場。よりオープンな仕組みが確立されると、魅力はさらに増す」と、人口減が進んでも日本の市場価値は高いと評価した。

 懸案としては、米中の貿易戦争を挙げた。国際ルールに反すると問題視し「米中のトップが話し合い、妥協点を探るしかない」と早期の沈静化を求めている。

 世界の経済成長が減速しかねないと恐れるのは、日本も同じだろう。

 そもそもEPA交渉が昨年から加速したのは、公正なルールに基づく自由貿易を繰り広げることで、保護主義を色濃くする米トランプ政権をけん制する思惑もあるからだ。

 強く懸念されるのは、農林水産業への影響である。

 競争力の高いEU産品の攻勢で被る打撃は、国内全体で最大1100億円と見込まれている。本県も牛肉や豚肉を中心に最大10億7千万円の影響があるとされる。

 対策として、政府は30日に発効する環太平洋連携協定(TPP)と併せて、2018年度第2次補正予算案に農林水産関係で3256億円を計上した。迎え撃つための生産・販売基盤の強化は急務である。

 EU側に競争が増すことへの警戒は薄いという。日本の外交筋は「EUは日本の農水産品を脅威と思っていない」と話す。「日欧が経験を共有しようとしているのであり、望んでいたこと」とマルムストローム氏も強気だ。

 当然ながら、日本酒や一部和牛などの地理的表示(GI)保護によって、日本の農水産品のEU市場参入も容易になる。折しもEUでは和食ブームで、日本産品への注目が増しているところである。

 EUの現状を追い風と捉え、日本からの輸出にも力を入れていきたい。