妊娠している女性が病院や診療所を外来で受診した際、窓口負担が上乗せされる「妊婦加算」制度の運用が、来年1月1日から凍結される。

 今年4月の導入からわずか9カ月で、事実上の廃止に追い込まれた格好だ。

 投薬を伴わないコンタクトレンズの処方などにも上乗せ負担を求める仕組みがネット上で問題視され、批判が相次いでいた。

 制度は全ての診療科を対象とし、それ以上の細かな適用基準や決まりを設けていなかった。妊婦が、どの診療科を受診しても適切な医療を受けられるようにするためだ。

 とはいえ、妊娠と直接関係のない診療にも上乗せ負担を求めるのは、制度設計上の不備だと言わざるを得ない。

 そうした負担増を求める仕組みが長続きするとは思えない。制度の凍結は当然だろう。

 妊婦加算を巡っては、初診で750円、再診で380円が医療機関の報酬に上乗せされる。これに伴い、妊婦の自己負担(原則3割)は初診で約230円、再診で約110円増えていた。夜間や休日はさらに増額される。

 こうした負担を求める制度にもかかわらず、2018年度の診療報酬改定に向けた中央社会保険医療審議会の議論は一度だけだった。

 導入後も、十分な周知がなされたとは言い難い。診察後の会計時に、患者が妊婦だと気付く医療機関もあったという。これでは何のための制度なのか理解に苦しむ。

 もとより、妊娠中の女性は体調の変化が大きい。安心して医療が受けられる環境整備は不可欠だ。負担増を理由に妊婦が医療機関の受診を控えたり、妊娠そのものをためらったりする事態になっては元も子もない。

 国や自治体が進める少子化対策に逆行することにもなるだろう。

 導入前に政治のチェックが十分なされていなかったのも問題である。

 妊娠中の女性には合併症や感染症への対応をはじめ、適切な薬の選択など、より丁寧な診療が欠かせない。その意味で、特別な配慮が必要な妊婦の診察を、全ての医療機関が敬遠することのないようにしないといけない。

 厚生労働省は今後、20年度診療報酬改定に向けて、制度の廃止も含めた見直しを検討する方針だ。

 妊婦の自己負担額や上乗せ加算の対象範囲は適切か。制度の必要性を国民に理解してもらうための手続きは万全か。厚労省は、専門家らの意見を踏まえて慎重に検討してもらいたい。

 そうすることにより、妊婦の医療体制が充実し、社会全体で妊娠・出産を支える環境が整う。

 全国の自治体も、妊婦の自己負担分を独自に軽減する支援策や、医療機関への効果的な周知方法などについて、今のうちからしっかりと協議しておく必要がある。