平成最後の大みそかである。もっとも、明けて明日も平成だから、最後という気分からはやや遠い。いずれにしても、今年も今日限り。この一年を振り返る

 この一年を振り返って、やっぱりこの人か、と岡山県倉敷市、中野秀子さん(71)に聞いた。夏の西日本豪雨で町の3割が浸水した真備町地区。自宅の2階で一夜、胸まで泥水に漬かりながら助けを待った人である。町内では50人以上が犠牲になっている

 「建前が終わったばかりなんですよ」。声は弾んでいた。水害で住めなくなった家を建て直し、少し怖いが元の所で、春には新しい生活をスタートさせる

 「あれもなくなった、これもなくなったと思わない日はないけれど、なくしたものを数えても仕方ない」。幸い、夫も、娘も、飼い猫も無事。思い出のアルバムは失ったものの、また一から思い出を作っていけばいい

 自宅は真備の中心地にある。戻った人はぽつりぽつり。水害保険に入っていた中野さんは、被災者の中でも生活再建のペースが早い方である。市内ではまだ、災害ボランティアセンターが活動中だ(新年は4日から)

 来年は、と尋ねると間を置かず、「安全で平凡な暮らしね」。非凡な体験をした人の語る、平凡の重みである。禍福はあざなえる縄の如し。来る年は、これまでに経験したことのない良い年に。