大杉漣さん(左)と隼平さん=2014年ごろ、東京都内(隼平さん提供)

 2月に66歳で死去した小松島市出身の俳優大杉漣さんの長男で、写真家の隼平さん(36)=東京都=が来年4月5~7日、県内で初めてとなる個展を徳島市のあわぎんホールで開く。「いつか故郷で写真展を開いてほしい」。亡くなる直前に父が口にした願いをかなえるため、来年初の作品発表の場に徳島を選んだ。

 隼平さんはロンドン芸術大で写真を学び、雑誌や広告、コンサート、俳優などの写真撮影を手掛けている。個展は東京を中心に、年に数回開いている。

 徳島の個展では、4年ほど前からパリやロンドン、ニューヨークなど欧米の主要都市を旅する中で出会った人や街並みを撮影した約70点を展示する。お年寄りや子どもが日常生活で見せる表情、どこにでもあるような景色を独特の感性で捉えている。ポストカードも販売する。

個展で展示する作品「LONDON」(隼平さん提供)

 大杉さんがカフェで台本を読みながら思い悩んでいる写真も出展し、亡き父をしのぶ。「不安はいつも隣り合わせ。何歳になってもそうなんだ」。大杉さんはしばしば、そう語っていた。写真からは、不安と向き合いながら芝居に打ち込む名脇役の内面を垣間見ることができる。

 写真の一部は、大杉さんが隼平さんのために作り続けてきた30枚余りの額縁に入れて展示する。口にこそ出さなかったが、徳島での個展開催を願っていたのを隼平さんは感じ取っていた。亡くなる1週間ほど前、大杉さんは額縁を作りながら「俺も徳島でライブやってるし、いつか(個展)やってよ」と初めて口にした。

 「その言葉がずっと心に残っていた」と隼平さん。秋に大杉さんの高校時代の同級生が墓参りのために東京を訪れた際、徳島で個展を開きたいと伝えると数人が協力を申し出てくれ、一緒に準備を進めている。

 個展開催中、隼平さんは会場に常駐する。「父がお世話になった徳島の人たちと会って、話ができるのを楽しみにしている」と語った。