移動スーパー自体は、昔からあって、主には中山間地の生活を支えてきた。これに時代の風を吹き込んだのが「とくし丸」だ。4月から県内全市町村をカバーする

 買い物難民は山深い地域だけでなく都市部にも及んでいる。要は社会が年老いたのだが、だから自然に販売網も拡大するというほど、商売は甘くない。そもそも店に来られない人が顧客なのである

 元徳島市議で創業メンバーの村上稔さんが、自著「歩く民主主義」(緑風出版)で秘密を明かしている。吉野川第十堰(ぜき)住民投票に深く関わった。「この経験が生きた」と村上さんは言う

 一軒一軒、投票の意義を説いて回ったのと同様に、地をはうように顧客開拓に歩いた。その数は、2012年の創業から5万軒に上る。対面して得られる情報の中にこそ、ビジネスの、そして生きるヒントがある。現場で実感した

 やがて人間の仕事の多くを奪うとされる人工知能(AI)は、大量の情報をさばくのにはたけている。しかし、おばあちゃん一人一人の暮らしのにおいまでは、かぎとれない

 買い物も何もネットで済む、便利ではあるが、においも手触りもない世界。効率は上がっても、社会は元気を失いつつあるように見える。ならば逆を行こう。人は<自分で感じ、決め、自由に生きる時、元気になる。以上>(同書)。同感だ。