スペイン北東部のカタルーニャ自治州で、独立の賛否を問う住民投票が行われて1年余りがたつ。この間、中央政府が同州の自治権を一時的に停止するなどしたことから、州政府が出した「独立宣言」は封印されたままだ。

 今年は、住民投票を実施して国家に背いたとする反逆罪で、当局に拘束されている州政府の元閣僚9人らの公判が始まる。裁判の行方によっては、独立派の運動が再燃する可能性もはらんでおり、予断を許さない。

 中央と州の両政府は時間がかかっても、冷静な議論を続けるのが重要だ。

 住民投票は一昨年10月に行われ、投票率43%で独立賛成票が約90%を占めた。中央政府の反対と、憲法裁判所の「違憲」判断を無視して強行したため、混乱を極めた。

 先導した当時の州首相プチデモン氏は現在、ベルギーで活動している。首相を解任されて反逆罪の対象となったため、事実上の亡命中だ。

 州独立派の仲間とはネット回線を使ったウェブ会議で密に連絡を取り、指示するなど根強い影響力を持つ。

 「独立運動は今も支持されている」と強気の見方は変えていない。投票率には納得しておらず「中央政府の承認を得て、改めて住民投票を」と息巻いている。

 カタルーニャは古来、独自の言語や文化を持ち、商工業で栄えた。世界遺産のサグラダ・ファミリア教会やサッカーを中心に観光産業も潤い、スペインの国内総生産(GDP)の20%を占める。経済力が高いため自立意識は強く、独立運動にも発展した。

 だが住民投票後、数千の企業が本社登記を州外に移したとされる。経済的打撃が州民の亀裂を一段と深める原因となったようだ。独立に反対するカタルーニャ社会党の幹部は「カタルーニャが分断されてしまった」と憤る。

 スペインのサンチェス首相と、プチデモン氏の後任で独立派のトラ州首相は昨年末、正式な会談の場を持ち、独立問題の解決に向けて対話を強化することで合意した。

 とはいえ、あくまでも住民投票での決着を図ろうとする独立派と、独立を問う投票は認めないとする中央政府の隔たりは埋まらないままだ。

 新たな局面となりそうなのが、反逆罪の公判である。早ければ今月中にも始まる見通しだ。反逆罪は最長30年の禁錮刑となる重罪であり、「不当な弾圧だ」との非難が独立派の間で絶えない。

 国内のナショナリズムの台頭も気になる。南部のアンダルシアの州議選で極右政党が初めて議席を獲得した。この政党はカタルーニャ独立に断固反対を唱えており、中央政府は独立派の活動を刺激しないか神経をとがらせている。

 住民投票では独立派住民と警察との間で衝突があり、800人余りの負傷者も出た。政治的解決の糸口すら見えないが、流血の惨事を再び起こすことがあってはならない。