隣国との友好関係に生じた亀裂が一段と深まらないか憂慮する。

 石川県・能登半島沖の日本海で、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊の哨戒機に向けて火器管制レーダーを照射したとして、防衛省が撮影動画を公開した。

 火器管制レーダー照射はミサイル攻撃や射撃をするために標的を定める行為で、不測の事態を招きかねない。

 事実であれば、両国の信頼を著しく損なうことになる。岩屋毅防衛相が「極めて危険な行為」と批判し、厳しく抗議したのは当然だ。

 防衛省によると昨年末、日本の排他的経済水域(EEZ)内で照射を受けた。数分間継続して行われ、意図的だったのは明らかだとしている。駆逐艦は対艦、対空ミサイルを搭載していたという。

 哨戒機内から撮影した動画には、駆逐艦のレーダーが作動しているのを乗員が確認し、韓国側に無線で複数回問い合わせる様子が記録されている。応答はなかったとみられる。

 韓国側の反論には納得しかねる部分が多い。

 韓国国防省はレーダー使用をいったん認めておきながら、後に「使ったのは漂流中の北朝鮮船舶を捜索するための探索レーダーで、哨戒機を追跡する意図はなかった」と言い改めた。

 逆に哨戒機が低空飛行で威嚇してきたと非難し、反論をまとめた動画も公開したが、言い分を具体的に裏付ける内容にはなっていない。

 韓国側の弁明には無理があると言わざるを得ない。主張を通すのであれば、説得力のある証拠を示すべきである。

 くしくも昨年末は、慰安婦問題を巡る2015年の日韓合意から丸3年を迎えた時期である。未来志向の関係を築こうと約束した両国が、新たな火種を抱えるというのは残念でならない。

 それでなくても最近の日韓は仲たがいが目立つ。慰安婦問題では合意に基づく財団の解散を韓国が決定し、日本側が反発した。元徴用工訴訟では韓国最高裁が日本企業に損害賠償を命じ、原告側が差し押さえの構えを見せたのに対し、安倍晋三首相が対抗措置を取る考えを示している。

 火器管制レーダーの照射問題は言語道断の重大事案であり、真相を解明しなければならない。とはいえ非難の応酬は亀裂をさらに深めるだけだ。そうなれば、安全保障面で米軍を含む連携にまで影響が及ぶ恐れがある。

 今年は北朝鮮の非核化に向け、正念場になる。日米韓がひときわ連携を強めなければならない時に、一角の関係が冷え込むという事態だけは回避してもらいたい。

 日本も韓国も、相互不信をこれ以上増幅させてはならない。両国外相は電話で会談し、早期解決が重要との認識で一致したという。関係を修復するため冷静に対話を重ね、意思疎通を深めるべきである。