私的な投資の損失を日産自動車に付け替えたなどとして、会社法違反(特別背任)の疑いで再逮捕された前会長カルロス・ゴーン容疑者の勾留理由開示手続きがきのう、東京地裁で開かれた。

 役員報酬を有価証券報告書に少なく記載したとして、金融商品取引法違反の疑いで昨年11月に逮捕されて以来、ゴーン容疑者が公の場に姿を見せたのは初めてだ。

 カリスマ経営者として知られ、さらに日産が、企業連合を組むフランス大手ルノーとの関係を再構築しているさなかでもある。国内外から大きな関心が寄せられたのは当然だろう。

 焦点となったのは、多額の損失を出した個人的な投資について、日産に財産上の損害を与えたのかどうかだ。

 ゴーン容疑者は法廷で「容疑はいわれのないものであることを明らかにしたい。日産に損害を与えていない。人生の20年を日産の復活にささげてきた。無実だ。不当に勾留されている」と述べた。

 東京地検特捜部の調べなどと、真っ向から対立するものである。今後、ゴーン容疑者側が具体的にどう反証していくのか、注視しなければならない。

 特捜部などによると、ゴーン容疑者の資産管理会社は新生銀行との間で「スワップ取引」を契約。2008年のリーマン・ショックで損失が生じたため、契約者を日産に変更し、約18億5千万円の評価損を付け替えたとされる。

 事実なら悪質なものだが、ゴーン容疑者は「一時的に担保を提供してもらっただけで、日産に一切損害を与えていない」と説明した。

 真相はどうなのか。容疑を晴らすためには、証拠をしっかりと示す必要がある。

 ゴーン容疑者はさらに、契約者を資産管理会社に戻す際、信用保証に協力したサウジアラビア人の知人、ハリド・ジュファリ氏の会社に09~12年、計1470万ドル(約16億円)を子会社「中東日産」から入金させた疑いが持たれている。

 これについて、ゴーン容疑者は、ジュファリ氏を「長年にわたる日産の支援者でパートナー」と呼び、資金調達や販売代理店との紛争解決などを支援してくれたとした。

 この件で、弁護人はジュファリ氏が「工場建設の許認可取得などに対する正当な対価だ」と話していると明らかにした。

 ゴーン容疑者は役員報酬を過少記載した容疑にも言及し「地検による訴追は全く誤っている。金融商品取引法に違反することはない」と強く否定した。

 否認を続けるゴーン容疑者の勾留は50日を超えた。長期の勾留が常態化している日本の刑事司法に対しては「人質司法だ」「弁護人の立ち会いもない」と、国内外から批判が出ている。

 果たして現状でいいのか、今回の事件を機に、十分な検証も忘れてはなるまい。