算数、数学嫌いの子どもを増やしたくない。ならば楽しく、分かりやすくと腐心したのが数学者の遠山啓さんである。四角いタイルを目で見て手で操作しながら、位取りの原理や計算の仕組みを理解する「水道方式」を編み出した

 遠山さんが亡くなって40年を迎えるが、東京都武蔵野市の塾で遺志は受け継がれている。主宰するのは小松島市出身の小笠毅さん。ダウン症や自閉症の子どもたちに、算数を中心に教える「遠山真学塾」を開いて40年近くになる

 出版社に勤めていたころ、原稿の受け渡しのたび、遠山さんから「計算ができることより、その意味や働きが分かることの方が大事だ」と声を掛けられた。数学が計算術ではなく、一つの思想であるのも教わった

 障害のある子どもたちの「なぜ」を大切にする塾の様子は本紙文化面などで折々に紹介されてきた。思い出深いのは草創期の塾生よっちゃんの問いだという。「足し算の『+』はどうして十字架なのか」。これがなければ学び直しの人生は始まらなかったと振り返る

 78歳の主宰に今も容赦なく質問が飛んでくる。風という字の中にいる「虫」はどんな虫か・・・。「人さまのお世話をと考えて開いた塾なのに、日々発見、むしろ教えられることばかりですよ」と小笠さん

 幼子から70代までの「なぜ」に答える1年が始まった。