一定の改善策は示したが、まだ不十分だ。

 企業や官庁の不正を内部告発した人を報復から守る公益通報者保護法の改正に向け、内閣府消費者委員会の専門調査会がまとめた報告書のことである。

 消費者庁が、関係者の間でさらに意見調整する必要があるとしたのは当然だろう。内部告発経験者らの声に耳を傾け、実効性のある改正案にしなければならない。

 保護法は、雪印食品の牛肉偽装事件や東京電力の原発トラブル隠しが内部告発で発覚したことなどを機に、2006年に施行された。しかし、通報者を現役社員に限るなど欠陥が多く、早期の見直しが求められている。

 報告書は、保護対象をOBや役員にまで広げるとした。OBを加えるのは、退職後の通報に対し、企業が退職金や年金を支払わないなどの報復を防ぐためだ。役員に広げるのは、上層部ぐるみの不正に対応する狙いがある。

 企業と行政機関に通報体制の整備を原則、義務付けることも盛り込んだ。

 通報しやすい制度に近づいたとはいえ、積み残した課題は多い。

 最大の問題は、報復した企業に刑事罰を科すのを見送ったことだ。

 報告書は「現時点では過大な行政措置導入は適当ではない」とし、代わりに、行政機関が是正勧告などを行っても従わない場合に、企業名を公表する措置を打ち出した。

 だが、それで不利益処遇をどれだけ抑止できるのか。

 解雇や降格、配置転換などの危険にさらされる通報者は、多大な犠牲を覚悟しなければならない。被害を受ければ回復は困難だ。そうした不安を解消するには、厳しい罰則が不可欠ではないか。

 報道機関など外部への通報要件を緩和しないのも、理解に苦しむ。

 現行法は、勤務先以外に通報する際の保護条件として、不正が行われていると「信じる相当の理由がある場合」などのハードルを設けている。

 勤務先への通報は外部に比べ、隠蔽されたり不利益を受けたりする恐れが強い。外部通報こそ、より容易にできるようにすべきである。

 ところが報告書は、行政機関への要件を緩めるのにとどめ、報道機関への通報は現状のままとした。

 刑事罰導入や要件緩和は、内部通報経験者が強く求めているものだが、経済界から反発が出ている。見送った背景に、企業側への忖度が働いたのなら看過できない。

 内部告発は消費者被害の拡大を防ぐだけでなく、企業の体質を改めさせる契機にもなる。データ改ざんなど、相次ぐ不正発覚で日本の「ものづくり」への信頼が揺らぐ中、その重要性はますます高まっている。

 勇気を出して不正を訴える人がしっかりと守られるよう、告発者の側に立った改正を求めたい。