紀行番組「世界の旅」の取材で訪ねた国は約150カ国に上る。移動距離にして地球180周分になるという。日本人の海外渡航が自由化される前の1959年から、世界の文化や風俗を伝え続けた旅行ジャーナリスト、兼高かおるさんが亡くなった

 世界一周コンテストで、約73時間の新記録を樹立した。ここから旅は始まった。ちなみにプロペラ機を使った記録としては、当時90カ国だった国連加盟国が、既に190カ国を超す今も最速だ

 北極から南極まで、行動力と語学力を武器に駆け抜けた。画家ダリやケネディ米大統領ら著名人との面会も、体当たりで次々実現させた

 とことん正確さにこだわった。見て感じ、確信したことだけを伝えた。その性格を象徴する話が、著書「わたくしが旅から学んだこと」(小学館)にある

 地球は本当に丸いのか。宇宙船アポロの写真で、ようやくそう思えるようになったが-。<90%は信じています。でも、できることなら自分の目で見てみたい。そこで初めて100パーセント地球は丸いと言うかもしれません>

 今や小さなスマホであらゆる情報が手に入る。だが聞くと見るとでは大違い。昨夏、インタビューにこう答えている。「直接、人に会って自分の心で感じることが大切ね」。今度は不帰の旅。懸念多き世界への“遺言”でもあろう。