保護主義が拡大し、世界貿易システムが揺らぐ中、新たな自由貿易圏が形成される意義は大きい。

 日本を含む11カ国が参加する環太平洋連携協定(TPP)が発効された。世界全体の国内総生産(GDP)の約13%を占める。加盟国がそれぞれ効果を生かし、成長につなげることで、さらに存在感を高めてもらいたい。

 協定は11カ国のうち、国内手続きなどを終えた日本やメキシコ、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアの6カ国で昨年12月30日に適用された。今月14日にはベトナムが加わり、残る各国も手続きを進める。

 農林水産品や工業製品など幅広い品目で順次、輸入関税を引き下げるほか、貿易や投資に関する共通のルールも設けた。

 日本の関税撤廃率は農林水産品で約82%、全品目では約95%に達する。政府の試算では、日本のGDP押し上げ効果が約7兆8000億円に上るという。

 国内の小売業界は、輸入コスト低減や商品値下げに伴う消費拡大を期待。自動車などのメーカーは輸出拡大の好機と捉える。

 ただ、負の側面への目配りを怠ってはならない。とりわけ、懸念されるのが輸入食品との競争にさらされる農家である。政府はTPPに備え、農業対策に多額の予算を投入しているが、安価な外国産に耐えられるかは不透明だ。

 消費者も、輸入牛肉や乳製品が安く買えるものの限定的なため、政府や経済界が強調するほどのプラス効果は期待できないとの指摘もある。

 各品目について継続的に検証し、効果の状況によっては柔軟に政策面で対応することが必要だろう。

 当初のTPPは、米国主導でアジア太平洋地域の貿易・投資ルールを策定し、中国に対抗する枠組みだった。世界のGDPの約4割を占めることから注目されたが、トランプ米大統領が離脱を決め、規模縮小を余儀なくされた。

 保護主義に走る米国や、影響力を高める中国を相手にするには、11カ国では十分とはいえない。他の国とも積極的に交渉を進めてほしい。

 現在、欧州連合(EU)離脱を決めている英国のほか、タイやインドネシアが関心を示している。加盟国が増えればそれだけ効果が大きくなり、TPPのルールが世界標準になる可能性も膨らもう。

 3月に日本との貿易交渉に入る米国は、農畜産物の関税引き下げ幅を「TPPと同等か上回る水準」で臨むとの方針を示している。

 日本は、TPPに続いて2月1日にEUとの経済連携協定(EPA)も発効する。広域経済圏を構築して市場開放基準を「防波堤」に、米国の要求をかわす狙いだ。

 多国間のルールに基づく、自由で開かれた国際的経済秩序を維持・強化しなければならない。日本にはその旗振り役を担う覚悟が求められる。