日没を前に剣山山頂から西を望む。眼下のあかね色に染まる雲海から三嶺が突き出て見えた=三好市の剣山

 冬の山の天気は気まぐれだ。西日本第2の高峰・剣山(1955メートル)は、雲が垂れ込め濃い霧に包まれていた。「眺望は期待できないか」と思いつつ登っていくと、思いがけない光景が待っていた。

 山頂周辺は、平地とは打って変わって一面の銀世界だった。今年は例年に比べ少し積雪が浅いものの、20センチ程度の深さはある。

 「宝蔵石(ほうぞういし)」と呼ばれる大きな石とヒュッテの間を抜け、頂上付近の平地「平家の馬場」に出る。風速10メートル以上の強い風が吹きつけてきた。気温マイナス10度。山肌に積もった雪に風紋が描かれ、木には霧氷がびっしりと付いている。

 視界は悪いまま日没が近づき、諦めかけていた時だった。風が強まり、視界を遮っていた霧が一気に消えた。目の前に姿を現したのは、沈み始めた太陽の光を受けて、あかね色に染まった雲海だった。

 雲の上には三嶺(1894メートル)が突き出し、奥には愛媛県の石鎚山系の山々が浮かんでいるように見えた。頭上は真っ青な空で、あかね色とのコントラストが美しい。空気の澄み切った冬だからこそ見られる鮮やかな色合いだった。