子育てを中心にした
ワーク・ライフ・バランスを考える

今回は仕事と育児の両立や、新しい働き方やライフスタイルの広まりについて研究されている鳴門教育大学准教授の坂本有芳さんに母親の立場から見た子育てと、働き方についてお話を伺いました。

プロフィール
坂本 有芳(さかもと ゆか)
鳴門教育大学准教授。博士(社会科学)(お茶の水女子大学)。大学卒業後、富士通株式会社勤務を経て大学院へ進学し、長男が3歳のときに博士号を取得。専門は生活経営学、社会調査法、家族社会学。子育て期の働きかたやテレワークを主題とし、多様な働きかたの強みと弱みや、人々の生活行動の変化に着目した実証的な研究をおこなっている。
2月に編著書、『キャリア・デザインと子育て―首都圏女性の調査から』(右)がお茶の水学術事業会から出版される予定です。

母親の子育てと仕事の両立の現状

近年は、育児もしながら仕事を続けている母親が増えてきましたが、出産前に仕事を一度辞める女性が多い状況は続いています。正規雇用の場合は子どもの状況に応じて柔軟に働くことが難しいと、多くの女性が判断しているからではないでしょうか。
そして子どもが小さいときからパートや派遣など非正規雇用で再就職する傾向がみられます。しかし非正規雇用の場合は時間の融通は利くけれど育児休業制度が充実しておらず、2人目、3人目の出産のときに困ってしまうのが現状のようです。
どちらかの働き方を選ぶにしても子育てを楽しみながら、未来を担う子どもたちを健全に育て、仕事も充実して働き続けることができる社会づくりが今以上に必要になってきています。

まずは母親がいきいきと

子どもの成長にとって、子どもと接する時間が長い母親がイキイキと元気にしていることが大切です。一時期、3歳までは母親が育児に専念することが望ましいと言われたころがありましたが、近年では「密室育児」といわれ母親のストレスによるさまざまな問題も指摘されています。
もし育児だけの毎日に息が詰まるようであれば、出産後の大変な時期が落ち着いたら、生活にメリハリをつけるために家の中に閉じこもらず、少しずつでも外に出ていく準備をすればいいでしょう。
もちろん仕事に復帰する、またはパートで働きに出るというのも一つの方法です。
もう一つとして、子育てを通して見えてくる新しい価値観や仕事観で将来のことを考え直す、学び直しの時期にしてみてはどうでしょうか。
最近では再就職のための支援制度やセミナー、スキルアップの講座などが開かれているので、それらを利用すればこの時期を有意義なものにできるはずです。
そして父親もこの時期から積極的に育児に参加して子どもの成長を見守り、子育てや家事という基本的な生活の営みの大切さを体験して欲しいです。
また近年の研究では、早寝早起きを中心とした基本的な生活習慣が、子どもの心や身体の発育にとても大切であることが示されています。早寝早起きの生活習慣は特に母親の生活時間、なかでも帰宅時間に影響されています。遅いと子どもも遅寝になり、18時前後までの帰宅だと早寝になっています。わたしの体験ですが、コンピューターメーカーに勤めていたころは夜中の2時、3時に寝るということがありましたが、子どもが生まれてからは子どもと一緒に寝て、朝早く起きて家事をしてという規則正しい生活に変わり、体調も良くなりました。子どもにとって良いライフスタイルは親にとっても生活習慣を見直すきっかけになります。

みんなが18時に帰る生活を

子育てを中心にライフスタイルを考えると、今も社会にある、睡眠を削って休暇も取らずに仕事をすることを良しとする機運には疑問があります。
時間を決めて制限時間内に仕事を済ませて帰るのではなく、できるだけ長く会社にいる。かつて、わたし自身もそんな働き方をしていた時期もありましたが、それではとても子どもの生活は守れません。
「子どもの健やかな生活を守る」=「18時には帰れる生活」が、すべての人にとって当たり前のことであれば、子育て中のパパ、ママだけが「早く帰って回りに迷惑をかけている」と肩身の狭い思いをしなくてもよいはずです。
「一億総活躍社会」という方向性が示されたいま、日々の生活にもゆとりを持てるような働き方をスタンダードにしていくことが求められていると思います。

テレワークの可能性

そんな中ここ数年、ICT(情報通信技術)の発達で「テレワーク」という働き方で仕事と育児の両立も含めた多様な人のニーズに合わせた働き方ができるようになってきています。
このテレワークとはインターネットを利用することで在宅でも会社にいるときと同じように仕事ができる働き方のことです。テレワークのメリットは図にあるように就業者、企業、社会全体にさまざまな効果が期待されています。最近ではテレワーク用のソフトウエア開発も進み
環境整備も格段に整ってきています。
この取り組みも広まり始めたばかりですが、この先多くの企業がこのテレワークを導入し、活用できれば従来の日本型の組織風土も大きく変わることが予想できます。
そしてこのテレワークに限らず、子どもが健やかに育つことを中心にした考え方で、ワーク・ライフ・バランスが実現すれば、こころ豊かにみんながゆとりを持って暮らすことができる社会になるのではないでしょうか。

「とくしま子育て大賞」大募集!!

徳島県では、次代の社会を担う子どもたちが健やかに生まれ育つ環境を、社会全体で支援する機運を醸成するため、徳島県在住の「イクメン」「カジダン」や、「育児等を応援している企業・団体」、また、「育児を楽しむシニア」を募集し表彰します。

イクメン・カジダン大賞部門
◎対象/家事または育児を楽しむ県内在住の「イクメン」「カジダン」
◎内容/家事または育児と、仕事の両立に関するエピソード(200字以上400字以内)と
写真を募集
◎備考/イクメン・カジダン大賞(1名)、イクメン・カジダン賞(若干名)を選定予定
※カジダン:家事に積極的な男性

子育てサポート大賞部門
◎対象/県内の企業・団体
◎内容/業員の育児参加やワーク・ライフ・バランスの推進、イクボスの養成などを図る企
業・団体を募集
◎備考/子育てサポート大賞(1社)、子育てサポート賞(若干名)を選定予定

シニア子育て大賞部門
◎対象/県内在住の育児を楽しむシニア(概ね現在で55歳以上)
◎内容/育児(お孫さんに限らず地域の子どもたちでも可)を楽しむ様子が分かる写真と
その概要(50字以内)を募集
◎備考/シニア子育て大賞(1名)、シニア子育て賞(若干名)を選定予定

応募方法
●専用応募用紙により、メール、ファクシミリ、又は郵送にてご応募ください。応募用紙は徳島県ホームページよりダウンロードできます。また、各部門の応募方法を専用応募用紙に記載していますので、必ずご確認ください。
●他薦の場合や写真の応募の際は、ご本人様や被写体様の同意を得た上でご応募してください。また、応募いただいた作品や写真は、県広報やマスコミに提供する場合がありますのでご了承ください。
●応募先・お問い合わせ(応募締切:平成28年2月12日※当日消印有効)
〒770-8570 徳島市万代町1-1徳島県県民環境部次世代育成・青少年課
次世代人材育成担当 TEL:088-621-2178 FAX:088-621-2843
e-mail: jisedaiikuseiseisyounenka@pref.tokushima.lg.jp

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