五輪は3連覇、世界選手権を合わせると16の大会で連続世界一。女子レスリングの吉田沙保里(さおり)さんが打ち立てた偉業は、家族あってのものと本人は言う。とりわけ母・幸代(ゆきよ)さんの言葉は、現役引退を表明するまで心の支えだったようだ。母の語録から

 2008年1月、北京五輪を控えた国際大会で黒星を喫して連勝記録が119で止まった。泣きじゃくる娘に「あなたに負けた119人の選手も泣いてきたのよ。1回負けたぐらいで、くよくよしてどうするの」。あえて、いつもより厳しい口調だった

 復調した北京五輪では金メダルに輝き、連覇を果たす。あの負けは神様による試練だった、と言う娘に、「沙保里、あれは神様からのプレゼントよ」と。言い換えが優しい

 五輪4連覇が懸かったリオ五輪は、まさかの銀。「あ、きれいな色やね。よかったね、うちにない色やから」。母だからこそ言えた。吹っ切れたと吉田さん

 引退の意思を最初に聞いたのは、幸代さんだった。同席した引退会見の場で「霊長類最強女子」の異名について聞かれ、冗談めかして答えた一言が、じんときた。「私にとってはかわいい、かわいい沙保里ちゃん。それは変わりません」

 サインを求められると、吉田さんは必ず「夢追人(ゆめおいびと)」と書き添えたという。母と一緒に、次はどんな夢を追いかけるのだろう。