性犯罪が起こる背景を語る福田さん=徳島市シビックセンター

 性犯罪者の更生支援などに取り組む徳島市出身の臨床心理士、福田由紀子さん=福岡県久留米市=が「暴力から読み解く女性の人権」と題して徳島市シビックセンターで講演した。刑務所で更生支援をしてきた経験を基に、性犯罪が起きる要因や社会的背景などを解説した上で心理教育の必要性を強調した。

 性暴力被害をなくすためには加害を絶つしかないと思い、刑務所での更生支援に取り組むようになった。性犯罪を犯した男性受刑者に対し、認知行動療法などを用いた更生プログラムを行っている。

 性犯罪の動機としてよく語られるのが「性欲を抑えきれなかった」ということだが、違う場合が多い。ストレスが関わっているともいわれ、実際そうなのだが、問題は「ストレス対処に女性を利用していい」という考えを持っていること。その根底には女性を見下す意識、女性への敵意や甘えがある。

 なぜそうなってしまうのか。考えられる原因は▽問題を抱える家庭で育った▽性被害に遭った経験がある▽母親との密着度が強い―などだ。

 例えば、父親が母親に暴力を振るう家庭に育てば、母親をばかにして女性を見下すようになるケースがある。父親から虐待を受けていたら、助けてくれなかった母親を恨み、女性に敵意を持つこともある。

 男性の性被害はより表面化しにくいが、性犯罪者の中には、幼少期に被害経験のある人が一定数いる。

 暴力で相手の思うがままにされたという体験は「男は強くあるべきだ」というジェンダーが刷り込まれている男性の自尊心を傷付ける。このため、自分より弱い女性や子どもを性暴力によって、支配下に置くことで自身の「男性性」を埋めようとする。

 さらに、身の回りのことを何でもしてもらうなど母親との密着度が強い場合、「女性には何をしても許される」というような甘えを持つようにもなる。

 「アダルトビデオ(AV)を見て、自分にも同じことができると思った」と話す加害者も多い。AVは男性に都合のいいように作られたものだということを理解しておらず、「女性は抵抗していても最後は気持ち良くなる」などと、誤った認識を持つ。日本は性教育が不十分で、ネット動画から性的知識を得る人も多いため、問題は深刻だ。

 性犯罪を繰り返さないようにするには、刑罰を与えるだけでは難しい部分もある。性暴力に走ってしまう原因を突き止めて、再犯リスクを減らすことが大切だ。

 この他、女性に対する認知をゆがめ、被害者を追い詰めるものの一つに「レイプ神話」がある。神話とは、偏向していて間違った理念や固定観念のことを指す。例えば「露出の多い格好だったから被害に遭った」「深夜に女性が酒に酔った状態で歩いていて被害に遭うのは自業自得」などだ。

 性犯罪者が被害者を選ぶ基準は「おとなしそう」「訴えなさそう」などが圧倒的に多く、服装で選ぶケースは少ない。酒を飲んで歩くことが「レイプしていい」のサインには決してならない。にもかかわらず、日本では特に被害者の落ち度を責める風潮が強い。

 神話は社会のゆがみを反映しており、それを信じるということは、性犯罪者と同じ考えを持っているということ。性犯罪をなくすためには、社会にはびこる間違った認識を正し、暴力は加害者が悪いという心理教育をしっかりしていく必要がある。