徳島ヴォルティスは、2018年シーズンに向け、11日に始動する。昨季、高卒ルーキーながら昇格争いが続く中で試合出場したMF小西雄大(19)=徳島県阿波市出身=は、昨季オフにスペインのクラブ・ラージョ・バジェカーノBに練習参加した(2017年12月6日~24日)。スペインの若手選手との練習で感じたことや、昨季を振り返りながらプロ2年目となる今季への意気込みを語ってもらった。

飛躍が期待されるMF小西雄大=2017年11月11日、鳴門ポカリスエットスタジアム

―スペインで練習参加した。

チームの方針もありましたし、自分も海外に行ってやってみたいというのがきっかけだった。

―練習法や強度で違いは感じなかったか

練習メニューは、多少の違いはありましたけど、(リカルド・ロドリゲス)監督がスペイン人というのもあって、似ていたものもありましたし、強度も似たような感じでした。日本人の監督の練習とは違いましたが、徳島で1年間やってきたので違和感はなくやれた。

―練習に加わって感じた違いは

向こうの選手と日本の選手で違いを感じたのは、前への(ゴールへ向かう)意識の高さ。それをすごく感じました。ミスは多いですけど、やっぱり、前に入っていくシーン、チャンスになるシーンはすごく多いなという印象が強かったです。そういうプレーが多い分、魅力的なサッカーができているのかなと思います。

フィジカルの差はそんなにないと思いました。アジリティ(俊敏性)のところは、日本人の方が優れているのかなと。ただ、トップスピードに入ったら速い。でも、日本人でも速い人は速いですから、フィジカル面ではそんなに変わりはないかなと感じました。

日本人は止める、蹴るの技術は高いなと思った。日本人が世界で通用する部分はいっぱいあると思ったし、逆に足りないものも感じた。その部分を補えたら、世界に出て活躍できるのかなと。まだ明確とまではいきませんけど、つかみにはなったのかなと。2、3週間でしたけど、思いました。

―刺激を受けたことは

練習参加したチームは18歳から23歳で、うまい選手がいっぱいいましたし、海外に出てサッカーをやってみることによって、海外への意識がすごい明確になるというか、ぼんやりしていたのが、しっかり目に見えるものになってきました。

―海外でサッカーをした経験は

中学、高校のときに1回ずつ。中学はスペイン、高校の時はベトナムでした。中学のときは大会で、高校の時は練習試合とか、遠征でした。今回はチームではなく1人。実際に海外に行くと(行ってプレーすると)そういう環境になるし、こんな感じになるんだろうなという感覚はつかめて、いい経験になりました。言葉は、全然分からなかったですけど、(徳島での)練習の時に監督が言っているような一緒の単語だとかは、「ああ、こうやってやってほしいんだ」とかっていうぐらいしか分かりませんでした。あとは、周りを見ながら臨機応変に合わせていました。

―現地では練習参加チームが途中で変わるというアクシデントも

いきなり、オフになって、急きょ違うチームを探してもらって、昨年、柴崎(岳)選手がいたテネリフェのBチームの練習に参加しました。同じスペインでも全然違うサッカーで面白かったです。(テネリフェに行くと)いきなり、温かくなって、(ラージョのある)マドリードでは寒くて、体調管理は結構気にしました。

―出身のガンバ大阪ユースで同期だった堂安律選手は、海外でプレーしている

刺激になっています。スペインに行っているときも電話して「海外はどんな感じ」って話しました。同期であれだけできている選手がいるので、自分はまだまだ足りないなと、負けたらダメやなと思って、頑張れるところはあります。

―ゆくゆくは海外でプレーしたい

そうですね。

子どもたちとサッカーを楽しむ小西選手=2018年1月2日、徳島市球技場

―自分の中で伸ばしていきたいところは

昨シーズン途中から課題に上げていた前への意識。前に出ていくというところは、向こうの選手もタフにやるし、意識はすごい高い。相手にとって怖い選手は(自分のチームにとって)貴重な選手ですし、そこの部分をもっともっとクオリティを上げていきたい。

―チーム始動までわずか。1年前と今年の心境の違い

昨年は、何試合か出させてもらって、(プロのシーズンが)どんな感じなのかというのを分かってきました。1年前よりは、落ち着いているというか、1年間を通した、しっかりしたプランを1年前より立てられているのかなと。

―2017年を振り返って、前半戦と後半戦で自身の変化は

気持ちの面。出られなかったときは、気持ちが下がっていたり、自信がなかったりというのが1番大きかった。。出られるようになったのは練習でしっかり頑張って、できるという確信が出てきて試合出場につながっていきました。

試合に出られなかったときなんかは、すごくバタバタしていた。「やれる」という気持ちが大事だと思います。過信ではないですけど、「普通にやれる」という気持ちが、本当に自分のいいプレーを引き出すきっかけになると、昨年はすごく感じました。今年はそういうのが分かっているだけあって、1年間、戦えるメンタルを持って戦っていきたい。

―2017年の最終戦(東京ヴェルディ戦)でベンチ入りしたが、出番はなかった。その前の試合に出ていただけに出たかったのでは

しびれる展開で「出たい」という気持ちはすごくありましたけど、あそこで出られないというのは自分の実力の無さというのもあります。自分が出てもうちょっと流れを変えられたかもと思いながら、そこで出られないというのは監督からの評価もまだまだ低いということ。自分の実力もないということなので、すごく悔しかったというのが正直あります。今年はそれをいい経験として、つなげられたらいい。

―新シーズンの目標は

とにかく、1年間通して試合に出るというのと、初ゴールを意識しています。シュートを打っているのに入らないというのはもやもやしますし、とにかく早く1点目を取りたい。

―地元出身で注目される存在。子どもたちの目標にもなっている

(1月2日の)サッカーフェスタに行って「ヴォルティスの試合に見に行くよ」という声もありましたし、応援してくれている人もいっぱいいるんだなとあらためて感じました。自分が子どもの頃にも思ってましたけど、地元の選手が活躍すれば、いい目標にもなると思うし、うれしいと思うんです。とにかく結果を求めて、あとはJ1に昇格したらもっともっと徳島のサッカーが盛り上がるんじゃないかなと。とにかく今年は結果を求めて、子どもたちに夢を与えられたらと思います。

―スペインではリーガの試合も観戦した

クラシコ(レアル・マドリード対バルセロナ)はすごかったです。観客席は満席ですし、十何万円の席も普通に埋まっていました。それぐらい払ってでも、試合に見に行きたいと思われる試合ってすごいなと。(差がありすぎて)あの中でやるイメージさえ浮かびませんけど、あんなところでできたら幸せだと思いながら、クラシコの試合を見ていました。

ラージョのトップチームの試合も見ました。2万人入るか、入らないかのスタジアムでしたが、サッカー専用スタジアムは雰囲気があって、もっと人が入っているような感覚になりました。

―小西選手のプレーで鳴門のスタジアムを満員にしてほしい

それぐらいになれたら、いいんですけど。何年かかるか分からないですが、できるだけ多く、1人でも多くの人がスタジアムに足を運んでくれるようになりたい。

スペインからの帰路、帰りの飛行機が遅れ、乗り継ぎ便に乗れないというトラブルにも見舞われたという。言葉も通じないない中で、帰りのチケットの手配や宿泊先の確保など、携帯電話の翻訳アプリなどを使いながら何とか乗り越えて帰国した小西選手。「今までで一番インパクトのあるクリスマスだった」と苦笑い。「言葉はしっかり勉強しようと思いました」と今季のもう一つの目標を掲げた。2年目のシーズンでさらなる飛躍にも注目したい。(城福章裕)

(2018年1月9日)